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バイデン政権のもとで息を吹き返すアメリカの「労働運動」...国民の67%が「組合を支持」する理由とは?

ニューズウィーク日本版 / 2024年3月23日 13時40分

労働組合の刷新を体現しているのは、シューラーのような新しいタイプの指導者だ。彼女は21年、AFL-CIO会長代行に就任。翌年には正式に会長に選出された。21年に死去するまで12年間にわたりAFL-CIOを率いたリチャード・トラムカ前会長は、全米鉱山労働者組合(UMWA)出身の古いタイプの指導者だった。

だが組合拡大の動きは大きな壁にぶつかっている。まず、標的とする成長部門(バイデノミクスで最も恩恵を受ける部門でもある)が実は最も組合を組織しにくいかもしれない。

アマゾンやメタ(旧フェイスブック)など巨大IT企業では組合労働者に依存しないビジネスモデルが確立済みで、組合を組織する動機はほとんどない。IT業界の場合、組合が大手企業と闘うのは産業がかなり成長してからで、過去に自動車など主要な製造部門で成長初期に組合結成の動きが見られたのとは対照的だと、バイデンの労働問題顧問を務めたハリスは言う。「組合は以前よりはるかに結成しづらくなっている」

GMでは「大恐慌中に組合が結成されて共に成長した。だがアマゾンやグーグルやメタの場合は、巨大化して組合を嫌がるようになってから組合を結成しなくてはならない」。

労働史の専門家によれば、近年はさまざまな業界の企業が組合つぶしに多くの資源を投じている。さらに、労働法の弱点や、組合の権利を保護する独立連邦機関である全米労働関係委員会(NLRB)の監視があまり役に立っていないことを、企業は巧みに利用している。

数十年来の労働法を刷新

22年4月、ニューヨーク市スタテン島にあるアマゾンの物流拠点で、同社として国内初となる労働組合の結成が従業員投票で可決された。スターバックスは既に、全米各地の店舗でも組合結成の波が起きている。

しかし、アマゾンとスターバックスの経営陣は団体交渉を延期。新しい組合は、賃金の改善と雇用の保護を強化する契約を結べずにいる。

「アメリカは労働者の団結権を保護する法律が弱い。雇用主は違反しても、罰金はたいした額ではない」と、マッカーティンは言う。「誠実に交渉していると見せかけておけば、合意に達することなく永遠に交渉を続けていられる」

民主党は組合の権利を強化する団結権保護法(PRO法)案を提出している。現代の労働問題に合わせて数十年来の法律を刷新する必要があると、UCLA労働センターのサバ・ワヒード所長は語る。

「現代の労働力は様変わりしている。スターバックスの一店舗が組合を結成することと、フォードの一工場が組合を結成することは全く異なる。100年前に産業が大きく変化したときも労働争議が激しくなった。同じことが起きているのだろう」

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