金利がある世界、過度な楽観は禁物
ニューズウィーク日本版 / 2024年3月22日 20時15分
日本が普通の経済状況に戻る通過点の一つ
2024年になって、日経平均株価は1989年のバブル期以来の最高値を更新するなど、日本経済の長期停滞が終わりつつある事を示唆する動きがみられている。かつては、日本は人口減少のおかげで成長停滞が続くため、デフレは避けられないなどの言説も散見され、金融緩和も不十分にしか実現しなかった。実際には、黒田前体制で実現した政策レジーム転換で金融緩和が強化されたことで、デフレはようやく克服されつつある。
デフレ克服に必要な政策手段は役割を終えたと判断する日銀の判断は、長年にわたった日本経済の異常な停滞が終焉しつつあることを意味する。もっとも、異常な状況を是正する対応により必然的に、「金利がある世界」に戻りつつあるというだけで、日本が普通の経済状況に戻る通過点の一つに過ぎない。象徴的な出来事ではあるが、一方的に楽観視するべきではないだろう。
金融緩和は、衰退企業を延命させるよりも、前向きな企業行動を促す大きな効果がある。金融緩和が弱まるネガティブな影響に配慮しながら、日本銀行は拙速かつ行き過ぎた引締めに踏み出さないことが肝要である。今回の政策変更によって、事実上フリーハンドを得た日銀の政策判断が、株式市場の不確実性を高める新たな要因になった、と冷静に認識すべきだろう。
(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)
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