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車いすユーザーの声は「わがまま」なのか? 当事者に車いす席の知られざる実態を聞く

ニューズウィーク日本版 / 2024年3月25日 11時30分

2019年に改正される前のバリアフリー法だと、客室総数50室以上の宿泊施設に対して車椅子使用者用客室を1室以上設ければいいとされていたので、仮に1000室あるホテルの場合、1部屋でも良く、当事者からすると選択肢は1つしかない。

眺望も重要視されていない傾向にあるし、そういった意味では、「とりあえず」なのだ。とりあえず、バリアフリー法にのっとって席を作りました、部屋を作りました、という体(てい)を一応為した、というだけ。なので、バリアフリー化をポジティブにとらえて実践しているところはまだまだ少ない、という印象だ。

一方で、障がい者の選択肢の幅については、特にアメリカは進んでいる。大谷選手がいるドジャースタジアムの車いす席は垂直・水平分散できていて、全ての階層のいろんなエリアから席が選べるようになっている。

例えば、一塁側から見るとホームの三塁側が見えるから、大谷さんが見やすいんじゃないかなとか、大谷さんに声を届けたいなと思って三塁側を選んだりとか。それが、1階席だったり2階席だったり、ホームランボールを取れそうだよねって、外野席を買うこともできる。

でも日本国内の球場などは、まだまだ選択肢が少なくて、決まったエリアしか選べないということが多い。だから観戦に行くと毎回同じ席ということになりがちだ。アメリカでは眺望や金額から自由に選べるようになっていて、今回はグラウンドに近い良い席、給料日前だから安い3階席にしよう、と。選択肢が豊富にあるということは、楽しみ方が沢山あるとも言い換えられるかもしれない。

――今回の映画館の件で、自分が高齢になってもし膝が悪くなって車いす生活になったとき、1人で映画館に行っても今までのようには楽しめないのかと考えた。

人間、年を重ねれば何かしらの障がいを感じるようになる。足が動かなくて歩けないとか、目が見えづらいとか、耳が聞こえないとか。みなさんが将来そうしたバリアを感じた時にすぐにバリアフリー化するのは難しい。

だからこそ今のうちからバリアフリー化しておくことは、将来みなさんが安心して暮らせる・余暇を楽しめるための投資として捉えていただくのが一番ポジティブな考え方だと思う。

日本の障がい者人口は、身体、精神、知的障がい者を合わせると、既に1000万人を超えていると言われている。そうなってくると、障がい者がいよいよビジネスの対象にもなってくる。障がい当事者が映画館やスタジアムに行きやすい環境をみんなで整えていきましょうとなると、移動経路で交通機関を使い、外で飲み物を買い、ランチもすればそれも「消費」になる。

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