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多様性の名の下で忘れ去られる「白人男性」...彼らもまた支援が必要ではないか?

ニューズウィーク日本版 / 2024年3月29日 19時30分

誤解される不安を克服することも重要だ。多くの白人男性が公平性や多様性、人種差別について話すことを恐れていると語る。自分が「悪者」に見られたり、自分の関心が偽善的と見なされ、救世主のつもりかと非難されるのを怖がる。

確かにそういうことはあるかもしれない。しかし難しい問題について本音で語れる場を見つけて、自分や世界について多くの発見を得られる恩恵と比べれば、そのような誤解など大したことではない。

WMRJのメンバーのダレン・サドマンは、生後3カ月の息子が突然死したのを機に、乳児突然死症候群(SIDS)の啓蒙活動を行うNPOを設立した。「確かに昔は、この活動をしていることについて、どう思われるか不安だった」と彼は語る。

全ての人が平等な世界へ

「私は昔から、誰かがのけ者にされているのを見ると、とても嫌な気持ちがした。それなのに、そうした価値観を生きる場がなかった。それが今は、好奇心旺盛で、思いやりがあり、居心地の悪い思いをすることを恐れない仲間を見つけた。気まずい思いをすることを受け入れれば、帰属意識と、これまで感じたことのない深いつながりを得られる」

「帰属とはどういうことかを知るまでは、何かに帰属しないことがいかに恐ろしいか、そして自分が他人の帰属をいかに妨げているか、気付かなかった。でも今は、排除されてきた人たち、特に私が排除してきた人たちに対して、もっと共感と思いやりを持てるようになった」

自分が所属する会社や学校や組織が、歴史的に疎外されてきた集団のためにチャンスを設けることに、憤りを覚える白人男性は少なくない。それは自分たちのチャンスを犠牲にしてつくられていると感じるのだ。

だが、よく目を凝らすと、そこで是正されようとしているのは、それまでほとんどの機会がまず白人男性に与えられてきた事実であることが分かる。彼らが喪失感を覚えるのは理解できる。しかし長い目で見れば、それは全ての人にとって平等な世界に至るための一歩なのだ。そこには白人男性も含まれている。

人種的不平等は、あらゆる人を非人間的に扱うことだ。そのピラミッドの頂点にいるからといって、白人男性が制度的な人種差別のダメージを避けられるわけではない。競争のフィールドを平坦にする努力を早く始めるほど、公平性という果実を早く享受することができる。

歴史的に疎外されてきた集団に属する人の中には、なぜこの期に及んでも、伝統的に社会を支配し、動かしてきた人たちを議論の中心に据えるのかと、私たちの姿勢を疑問視する声もあるだろう。

だが真の革命は、抑圧者と被抑圧者の立場を入れ替えることでは生まれない。帰属と愛によって、あらゆる人が人種差別や家父長制から解放されたときに起こる。だから恒久的な変化を実現するには、白人男性の愛と帰属に目を向ける必要がある。

帰属は、深く人間的な経験だ。それが本物であるとき、私たちは真の思いやりと共感を持って他者に心を開くことができる。白人男性がこの経験をすれば、その影響力のある立場を利用して、全ての人が心から帰属できる場所をつくるために立ち上がることができるはずだ。

<本誌2024年2月27日号掲載>



ロン・カルッチ(米コンサルティング会社ナバレント共同創業者)、ゾーイ・スペンサーハリス(米バージニア州立大学社会学・刑事法学助教)


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