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睡眠不足で起訴も? 「24時間以上眠っていないと99%の精度で分かる血液検査キット」が開発された

ニューズウィーク日本版 / 2024年4月8日 18時50分

さらに、オーストラリアには、「睡眠不足による運転は飲酒運転と同じように他人の命を危険に晒しているから、アンダーソン教授の血液検査で睡眠不足が認められれば、将来的には起訴も可能になる」と考える研究者もいます。

セントラルクイーンズランド大のマデリン・スプラジャー博士は、安全な運転にはドライバーの最低睡眠時間の法的基準も必要となってくると考えており、4時間から5時間の睡眠が目安となりそうだと語っています。AAA交通安全基金の報告書と比べると、やや緩やかな基準ですが、起訴にも通じる数値と考えると十分に厳しいかもしれません。

さて、海外でこれほど睡眠不足の運転に対する悪影響が深刻に考えられているのは、居眠り運転が事故の原因の約1/5を占めるという頻度の高さによりますが、実は日本では居眠り運転による事故はそれほど多くはありません。

日本は狭い国土なので、居眠り運転を誘発する長距離の直線道路はそもそも少ないです。さらに高速道路では、車線をはみ出すと「ブーン」という音と振動でドライバーに警告する工夫があったり、長い下り坂や急カーブには速度超過や滑り止めのために道路を横切る薄い塗装があって居眠り運転防止にも役立っていたりするからです。

警察庁交通局によると、令和4年に国内で起きた24061件の死亡・重傷交通事故のうち、飲酒事故で居眠り運転を伴ったものが394件中37件(9.4%)、飲酒事故以外の居眠り運転は286件(1.2%)でした。

また、日本自動車研究所の栗山あずさ氏と大谷亮氏による研究では、2019年の交通事故統計データを分析すると、死亡事故2434件のうち96件(3.9%)、重傷事故24651件のうち283件(1.1%)、軽傷事故316557件のうち1392件(0.4%)が居眠り運転によるものでした。

こうしてみると日本では居眠り運転が原因の交通事故は1%にも満たないように見えますが、交通事故総合分析センターの交通事故統計データは当事者への聴取により作成されるため、前方不注意(わき見運転)に計上されている可能性も高いという先行研究もあるそうです。

さらに、他の事故原因に比べると、居眠り運転による事故では死亡6.9%(他の事故原因では0.7%)、重傷20.3%(同7.1%)、軽傷72.8%(同92.2%)と、重大事故となる可能性が高いといいます。両氏は、「居眠り運転では衝突回避操作が行われないため死亡事故や重傷事故が増えるのではないか」と分析しています。

ドライバーに対する睡眠不足の血液検査は採血が必須であるため、吐いた息で判定できるアルコール検査ほどは手軽には行えません。アンダーソン教授は、研究を発展させて、いずれは唾液や息からも検出できるようにしたいと考えています。

また、居眠り運転が疑われる場合は事故前後の車の挙動も鍵となります。血液検査の結果と問題の車の目撃情報や街頭防犯カメラ映像などをどのようにすり合わせていくか、事故の原因究明の手続きをいかに明確にするかなど、実用化には議論が必要でしょう。

新型コロナウイルス感染症が第5類になってから初めてのゴールデンウィークが近づいています。今年こそは、自動車に乗って家族で遠出をと思っている人も多いかもしれません。睡眠不足での運転へのペナルティは事故を起こさなければ現在はありませんが、疲れたらどこかで仮眠をすればいいと見切り発車せずに、十分な睡眠を取ったうえで安全なドライブをしたいですね。

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