トルコ統一地方選「野党が20年超ぶりに全国規模で勝利」エルドアン大統領率いる与党敗北の裏側
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月10日 10時56分
CHPの党内力学も勝利に一役買った。CHPは前党首のケマル・クルチダルオールの下で「万年野党」に甘んじてきたが、変革を求める支持者の声に応じ、昨年11月、新党首にオズギュル・オゼルを据えた。
さらに、トルコが独裁政治に移行していると警鐘を鳴らすイマモールやアンカラ市長のマンスル・ヤバシュ(今回再選を果たした)など、カリスマ性を備えた市長らを前面に押し出す形で選挙戦を進めた。
投票率が高いことで知られるトルコだが、今回はわずかに低下した。2019年の統一地方選では84.7%だったが、今回は78.1%と04年以降で最も低かった。
主な理由は与党支持者の不満だ。政府が約束した景気対策を実行しなかったことで、特に退職者や失業者など社会的弱者の間に失望が広がった。
エルドアン自身が候補者ではなかったことも選挙結果に影響したようだ。彼は選挙戦で自らの「顔」を前面に出そうと努めたが、自分への支持をAKPへの支持につなげることができず、かえって政治の刷新を求める声が浮き彫りになった。
今回の結果は、18年にトルコが大統領制に移行したことも一因だろう。この変革により大統領に権力が集中し、地方との接触が徐々に途絶えたことで、地方レベルでの大統領の影響力が低下しつつある。
大統領の権限にほとんどチェック機能が働かないトルコで、地方選挙は大統領制の「抑制と均衡」という中央ではほぼ機能しない概念をよく体現している。エルドアンは常々、選挙により自らのリーダーシップと正統性を築いてきたと言うが、今回は有権者の予想外の反応に迎えられた。
野党が注意すべき2点
トルコの有権者は力強い市民社会活動で知られ、独裁政治に向かいつつある潮流に抵抗する重要な勢力となっている。有権者は行動を起こすことで、より均衡の取れた政治環境を生み出し、いかなる過激主義の広がりをも抑制する一助となってきた。
イスタンブール市長に再選されたイマモールは、勝利演説の冒頭で「民主主義の衰退は終わった」と語った。この発言は、今回の選挙は投票率こそ低かったものの、トルコが民主主義の力強い回復を示したことを強調している。
市民にとって選挙は重要であり、指導者は有権者から本当の信任を取り付ける必要があると改めて確認する言葉だった。
CHPの歴史的な勝利は、経済面での不満や指導者刷新への欲求、統治についての懸念などが、多くの有権者を野党支持に駆り立てつつあることを示している。ただし野党にしてみれば、この地方選が強い追い風になるとはいえ、今後の道が平坦ではないことも確かだ。
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