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60年代学生運動『いちご白書』再び、ニューヨークのキャンパスが燃えている

ニューズウィーク日本版 / 2024年4月24日 11時30分

この動きはこの問題の大きな転換点になりつつあります。処分と逮捕の対象となった学生の多くは直接暴力行動に走ったわけではありません。学生たちが主張している、「イスラエルがガザで行っているのはジェノサイド(大量虐殺)だ」とか「即時停戦を」という言い方は、「アンチ・セミティズム(反ユダヤ)」であって、人種迫害という重大な犯罪だというロジックが逮捕の理由とされています。

本来この「アンチ・セミティズム」という言葉は、欧州やロシア、アメリカ南部などで歴史的に見られたユダヤ人迫害を指す言葉です。パレスチナ側に立って、イスラエルの政策を批判する意見への非難に使うのは、言葉として誤用なのですが、ここへ来てそうした歯止めはなくなりました。

強引な論理ですが、こうした論理の裏には、例えばユダヤ系の学生、特に政治的な関心の薄い学生などが「自分の身の危険を感じる」と強く訴え出ていること、大学の経営を支えるユダヤ系大口寄付者の多くから強い批判があることが背景にあると言われています。ニューヨーク市の世論も、やはりユダヤ系の住民の影響力の反映として、数の論理、経済の論理としては、イスラエル寄りです。

一方で、パレスチナ支持派の学生たちは、パレスチナ国旗を掲げ、白黒チェックのバンダナをまとっています。中には「ハマスを支持する」というスローガンも見られます。ハマスは武装組織だけでなく、ガザ地区の行政を回している政党ですから、支持するとしても、正確に言えばテロを支持したことにはなりません。ですが、学生たちのそのようなルックスや言動は、どうしても親ユダヤ系に恐怖感を与え、強く挑発してしまいます。その結果として対立が激しくなっていったのは事実です。

ですが、暴力を取り締まるのではなく、言論を取り締まるという今回の停学・逮捕という行動は、やはり衝撃的でした。まずコロンビアの中では賛否両論の対立をエスカレートさせることとなりました。その結果として、今週からコロンビアは対面授業を断念し、全てをリモートに切り替えることになりました。

実際は学年末なので、影響は限定的なのですが、これに対して多くのリベラル派の教員、中間派からパレスチナ支持派の学生は猛然と抗議を始めています。一部には、学ぶ権利が侵害されたとして「学費返還運動」を行うグループまで登場しました。

 

さらに、このコロンビア大学での逮捕劇は、マンハッタン島の北から南へ飛び火して、NUY(ニューヨーク大学)での「ガザ攻撃反対運動」を一気にエスカレートさせています。こちらでもNY市警は同様の対応を取り、4月22日の月曜日には約150名の逮捕者が出ました。これに対しては、22日の晩には大量逮捕への抗議行動として、松明を赤々と掲げたデモがNY市警本部を取り囲む状況となり、一時騒然とした状況になっています。また、23日の火曜日には捜査に入ったNY市警とNYUの学生が、グリニッジ・ビレッジのキャンパスで衝突するという事件も発生しました。

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