パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月1日 12時0分
このステファニク議員の一種の挑発の結果として、「パレスチナ支持の言動は、それ自体がユダヤ系へのヘイトとして犯罪を構成する」というような拡大解釈が成立してしまいました。今回の一連の各大学による処分や警察の導入は、この論理を根拠にしています。もちろん、そのために各大学の教員の多くは激怒しているのですが、これに対しては多くの保守政治家が「デモに参加した教員はクビ」だと主張しており、まるで戦前の東大(例えば、河合栄治郎や矢内原忠雄が追放された事件)のような話になっています。
政治家のアピールも背景に
例えば、共和党のジョンソン下院議長も、最初の逮捕劇の直後にコロンビア大を訪問していました。そしてテレビのクルーの前で、「こうした事態を招いたのは遺憾」だとして学長の辞任を求めました。ジョンソン議長の場合も、「ウクライナ支援予算」の成立を助けたとして保守派に恨まれているので、「自分が真正保守」だというアピールが必要だったのです。それがコロンビアでのパフォーマンスの背景にはあります。
いずれにしても、こうした政治家の暗躍は若い学生たちをますます怒らせています。反対に、バーニー・サンダース議員などは若者に強い影響力を持っています。サンダースは自分がユダヤ系であり、そのために若いときには「イスラエルの入植地で労働して自分探しをした」という経歴があります。そのサンダース議員が厳しい口調でイスラエル軍の非人道的な攻撃を批判するというのは、若者の感性には刺さるのでしょう。
同様に、ソマリア出身のイスラム系として、「イスラム嫌悪(イスラムフォビア)」に対して異議申し立てを続けてきた、イルハン・オマル議員も若者に支持されています。彼女の娘であるイスラ・ヒリシ(コロンビアの姉妹校である女子大のバーナード・カレッジの学生)は、コロンビアにおけるパレスチナ支持運動のリーダーになっています。
政治的分断の時代であるために、保守派議員はこのような学生運動を激しく非難するパフォーマンスを支持者に見せたがります。一方で、民主党の左派は、一貫して中東問題におけるパレスチナの人権を問題視しています。そのような政治的分断という社会背景も、今回の問題で対立をエスカレートさせている要因と言えます。
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