カーネル・サンダースはなぜマレーシアで嫌われた? KFCを脅かすボイコットのうねり
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月10日 12時0分
つまり、開放的な経済体制だからこそ世界各地から小売、外食産業も進出していて、KFCの店舗数でマレーシアは世界第8位である。だからこそ、ボイコットの動きが発生した場合のインパクトは大きい。
さらに、メディアや政治活動に対する規制が総じて強い中東各国と異なり、マレーシアでは政府などに対する抗議デモも少なくない。イスラーム世界におけるアメリカの軍事作戦が批判されることも珍しくなく、これまでも湾岸戦争(1991)、アフガニスタン侵攻(2001)、イラク侵攻(2003)などの際に反米デモが広がった。
こうした背景のもと、イスラエル=ハマス戦争をきっかけにマレーシアではKFCだけでなくマクドナルド、ユニリーバ、スターバックスなど、多くの米ブランドがボイコットの対象になっている。
とすると、マレーシアでは開放的であるがゆえに反米ボイコットが表面化しているわけだが、それは逆にマレーシアほど開放的でないイスラーム諸国で潜在的に広がる反米感情を暗示する。
ボイコットはいつまで続く?
ガザでの戦闘が収束しない限り、米企業へのボイコットは今後さらに拡大すると見込まれる。
マレーシア政府はイスラエルやアメリカとの関係を悪化させすぎないことを意識している。
現在クアラルンプールで開催されている防衛装備品の国際展示会に、アメリカ企業が予定通り参加したことは、それを象徴する。マレーシア国内ではイスラエル空軍にF-35ステルス戦闘機を提供する米ロッキード・マーティン社などの参加を批判するデモが広がっていた。
また、ボイコットが広がれば現地雇用の従業員のレイオフも増え、失業率を悪化させかねないことも、政府にとって頭の痛いところだろう。
ただし、政府の慎重な配慮は、かえって国内の反米世論を煽りかねない。
もともとマレーシアの若者の間には(アメリカを含むほとんどの国と同じく)現状への不満が広がっている。4月段階でマレーシアのGDP成長率は4.4%と堅調だったものの、近年では(やはり多くの国と同じく)高等教育を受けた若者の受け皿が減っている。
世界銀行の統計によると、昨年の若年失業率は10.66%で日本の約2.5倍だった。こうした背景のもとで国外移住を望む割合は5.5%にのぼり、世界平均の3.3%を上回った。
将来への不安が強い一方、若年層ほどネットを通じてガザの情報に触れる機会が多く、SNSなどを通じてボイコットの動きが広がりやすい。そのうえ日本と正反対にマレーシアでは、若年層ほど投票率が高い。
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