新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月10日 16時22分
被害者から見れば「一方的に恋愛感情を募らせて、関係が破綻したらあげたものを返せと迫ってきたヤバい奴」でしかなかっただろう。言うまでもないが、一般的に「あげたものを返す義務」は存在しない。客として貢いだ金を取り返すことなど不可能であり、「あきらめる」以外に選択肢はなかったはずだ。勉強代だったと思うしかない。
水商売というのは、多かれ少なかれ「色恋営業」が行われるものだ。和久井容疑者は過去にはストーカー規制法違反による逮捕歴もある。警察も当然、和久井容疑者の「金を取り返したい」という言い分を聞いていた。
それでも生前の平沢さんに対して詐欺罪が適用されていないということは、平沢さんの行為は結婚詐欺なんかではなく、法的には問題なかったということだ。少なくとも、立件できるほどの明確な証拠はなかった。
にも関わらず「結婚詐欺」と想像で決めつけることは、亡くなった被害者への冒涜にほかならない。レイプ神話同様、ネット空間はとかく「被害者叩き」に流れやすい。被害者叩きをしている人たちを、心から軽蔑する。
ガールズバーやキャバクラで働いている女性スタッフであれば、男性客に対して恋愛感情があるかのような素振りを見せるのは、至極当然である。その意味で、水商売のスタッフというものは総じて「恋愛詐欺予備軍」のような人たちと言える。
恋愛感情を匂わせて客を店に来させたり、高額なボトルを入れさせたりするのは、この世界では常套手段だろう。それらは必ずしも「詐欺」とは言えず、色恋営業と恋愛詐欺の線引きは、決して容易ではない。
キャバクラも取り締まるべき?
今回のような事例は、しばしば悪質ホストが女性客から大金を貢がせるケースと比較して語られる。「悪質ホストを取り締まるなら、悪質キャバクラも取り締まれ」という主張をする人々がいるのだ。一見フェアなように聞こえるが、私はまったく賛同しない。
キャバクラとホストにはさまざまな差異があるが、特に「年齢」というものに着目したい。ホストクラブで高額な支払いを迫られる女性の多くは、20代前半の社会経験の少ない若者が中心だ。客とスタッフの年齢も近く、「真摯な恋愛」と錯覚しやすいとも言える。一方、キャバクラの場合は今回のように40〜50代、あるいはそれ以上の「良い歳をした大人」が相手となる。
同じような色恋営業であっても、騙す側が20代、騙される側が40〜50代のいい歳した大人となると、「おじさん馬鹿じゃないの?」と私は思ってしまうのだ。
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