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写真花嫁、戦争花嫁...「異人種間結婚」から生まれたもう一つの「日系アメリカ人文学」の100年

ニューズウィーク日本版 / 2024年5月22日 11時5分

彼女が1932年に出版したHoly Prayers in A Horse's Ear(Roy Long & Richard Smith)には、20世紀初頭に日本人とアイルランド人のルーツを持つことで、日系人コミュニティにも、白人コミュニティにも属しきれないことの苦悩が書かれている。

居場所のなさという問題は、多くの複数の人種ルーツを持つ日系アメリカ人作家の共通テーマである。

エルドリッジは、白人男性と結婚をして、白人にしか見えない子どもを産んだ後、ようやく自分の人種的不安定さが解消できたとし、白人アイデンティティへの帰属を書いている。

彼女のように、白人が主流であるアメリカ社会で、日本人のルーツを隠し、白人として生きようとすることをパッシングというが、パッシングも複数の人種ルーツを持つ日系アメリカ人作家のテーマとして扱われる。

また興味深いテーマとして、複数の人種ルーツを持つ日系アメリカ人の中には、両親と外見が似ていない人もおり、他者が親子関係を疑うといったことを題材とする作家もいる。

作家となった戦争花嫁の子どもたちは、19世紀末からの日本人移民の子孫である複数の人種ルーツを持つ日系アメリカ人作家たちと一部重なりつつも異なる独自のテーマを文学の中で表現している。

日本人であるがゆえに強制収容という過酷な経験をした日系アメリカ人の中には、自分たちを苦境に陥れた白人アメリカ人と結婚した戦争花嫁に苦々しい思いを抱いている人もいた。戦争花嫁たちの中にはアメリカで日系アメリカ人コミュニティから受け入れてもらえなかった人もいた。

また、第二次世界大戦中、日本はアメリカの敵であり、日本軍に自分の家族を殺されたアメリカ人たちの中には、戦争花嫁に敵対的な態度をとる者もいた。

アメリカ社会の中で孤立する母と暮らした複数の人種ルーツを持つ作家たちは、母の孤独や、自分自身の所在の無さ、父親やその家族の差別的態度などを文学テーマとして扱い、こうした作家にはTeresa Williams-LéonやVelina Hasu Houstonがいる。

日系アメリカ人文学は、その始まりは移民世代のToshio Moriといった作家たちで、アメリカでの生活の厳しさや、一方でアメリカに根付いていく中で家族が増え、子どもがアメリカ人として育っていくことの喜びを書いた。

その後、第二次世界大戦中の強制収容の経験は、日系アメリカ人強制収容文学というジャンルを生み出し、John OkadaやYoshiko Uchidaといった作家が数々の傑作を作り出した。後続の日系アメリカ人作家たちも、日系アメリカ人たちの今の経験を表現し続けている。

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