「あの二分論争」をいつまで続けるつもりですか?...分野・業種を超えた「越境対話」の意義
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月29日 11時35分
越境対話の意義
上記シンポジウムでは、改めて越境の意味について話し合われた。研究者になろうと決めた頃は、自身の探究が第一であったにもかかわらず、学術研究のトレーニングを経てプロ化するにつれ、まるで業界ルールに染まっていくように、結果がでる(だしやすい)研究で「まとめあげる」ようになっていく...内省とともに発言される感想のやりとりからは、そのような状況に陥っていることを自覚するために、分野を超えた対話の重要性が語られていた。
「超えるのではなく辿る、二つの文化」フォローアップのシンポジウム 2023年12月18日開催
これは、今日的ないわゆる「学際研究」といわれる分野横断型の研究の推進や、「オープンイノベーション」における共業の推進とは、真逆のメッセージであると言っていい。
特に行政からのトップダウン的政策において、これら学際研究やオープンイノベーションは、課題解決や価値創出のために多様な学術分野やステークホルダーが共同すべし! という文脈にて叫ばれているのだが、今回の連載およびシンポジウムでは、我が身を振り返るためにこそ他分野、他業種と共同せよ、なのだから。
世間では、分野や業種を超えた共同を掲げつつも、それがなかなか成果を産まない理由はここにある。個々人の力がものごとを真に活動させる源泉であるのに、そこを軽視して、成果ばかりを追い求めすぎているのではなかろうか。分野を超えた対話や研鑽の場の創出を、アウトプットが明確でないといった理由で軽視している。こともあろうか、学問を担う大学で、だ。
学際や越境はあくまで結果でしかないのに、それを目標に掲げるからおかしなことになっているのだ。個々人の内側における本当に何かを知りたいという探究心に従えば、または、本当に何かを解決したいという情熱に従えば、自ずと分野も業種も超えるのである。
越境対話を拒むもの、それは自分自身
しかし、この我が探究心に従うということ、いうなら、常に我が身を振り返る内省的自覚こそが一番難しい。他分野と接し、我が身を振り返る機会を提供されていても、忙しすぎてなかなか出向けないという声をよく耳にする。
しかし、今一度、ここで自分に喝をいれて欲しい。「忙しいから我が身を振り返えられない」のではなく、「我が身を振り返ってないから忙しい」のだと。
つまりはこうである。以下、学術界の例だが、ビジネスパーソンは自身の業務に置き換えて読んでほしい。
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