1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

「あの二分論争」をいつまで続けるつもりですか?...分野・業種を超えた「越境対話」の意義

ニューズウィーク日本版 / 2024年5月29日 11時35分

他分野の研究者や他業種と出会おうとしないし、対話しない → 自分の狭さを感じることがない上、新たな視点、観点を獲得することがない → 研究センスが磨かれず、感度が鈍る → 自分の研究分野でのみ評価される仕事しかできなくなる → 他分野や世間に響かないので、一生懸命自分の研究の重要性を説明する必要が生じ、かつ、研究(論文等)の量ですごさを見せつけなければならなくなる(*)→ 忙しくなる → 他分野の研究者と他業種と出会おうとしないし、対話しない(最初に戻る)

なお、(*)の時点において「頑張っている自分に満足(陶酔)し、自分を理解しない他者(他分野や社会全般)が悪い」と居直り、外への関心が無くなっていくパターンもある。

ひらめきや気付きは、あなたが行動した結果

改めて、今回の連載およびシンポジウムを通じて、越境対話の意義を得たが、それはアカデミア、ビジネスの各世界に留まるものではなく、各自が深く自覚するものであった。

学問とは、「問い学ぶ」ではなく、その本質から考えると「問いに学ぶ」ではないだろうか。その「問い」の所在は、自分の外であろうが内であろうが、いずれも、自身の内側にある探究心から生じる。そうである限り、我々は常に自身の感受に敏感になる必要があるのだ。これが、全4回の連載、およびシンポジウムでのメッセージである。

もし、ご関心いただけたのなら、ぜひ全4回の論考を読んで頂きたい(以下にリンクあり)。そして、もし上記の、いうなら「負のスパイラル」について少しでも自覚があるなら、騙されたと思って他分野や他業種と出会い対話する交流会に参加してみてほしい。ただし、修行と思って最低1年間は毎月1回ぐらい自身に課すこと。これは筋トレと同じで、単発では効果はないのだ。大丈夫。筋肉は裏切らない。

◯ 連載企画 第1回 : 超えるのではなく辿る、二つの文化 『学問との再契約』 アステイオン vol. 95, 2021 
◯ 連載企画 第2回 : 超えるのではなく辿る、二つの文化『解く理系に問う文系』 アステイオン vol. 97, 2022  
◯ 連載企画 第3回 : 超えるのではなく辿る、二つの文化『納得の文系に説得の理系』 アステイオン vol. 98, 2023 
◯ 連載企画 第4回 : 超えるのではなく辿る、二つの文化『学際、挑戦から日常へ』 アステイオン vol. 99, 2023 

[注]
最近は、異分野交流会などは各所で開催されており、少し探すとたくさん見つかるはず。私の所属先の京都大学学際融合教育研究推進センターでは15年前から毎月「全分野交流会」(基本ZOOM。年に3、4回はリアル)を開催している。加えて、2年かけて全国をまわる分野不問の研究ポスター大会「全国3Questions」を開催中である(主催:公益財団法人国際高等研究所)。それぞれぜひ検索して頂き、もしよければ参加を検討して欲しい。

宮野公樹(Naoki Miyano)
1973年生まれ。立命館大学理工学部卒業。同大学院博士後期課程修了。カナダMcMaster大学、立命館大学、九州大学を経て、現職。専門は大学論、学問論。京都大学総長学事補佐、文部科学省学術調査官の業務経験ももつ。一般社団法人STEAM Association代表理事。近著に『問いの立て方』(ちくま新書)、『世界が広がる学問図鑑』(Gakken)の監修も。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください