「サイバー性暴力」をもう放置できない...虐待サバイバーとして声を上げる意味とは
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月24日 14時5分
サラ・チンキュロバ(ジャーナリスト) for WOMAN
<性暴力は被害者の心を奪い、沈黙させる。デジタル化する性の搾取に厳重な処罰を>
私はスロバキアとチェコで、精神疾患とアルコール依存症と家庭内暴力で荒廃した家庭に育った。両親はほとんど家にいなかった。
6歳から17歳になるまでずっと、家族の友人から深刻な性的虐待を受けていた。誰も彼を止めなかった。
彼が家に来るたびに、耐え難い不安と悪夢に襲われた。忘れたくても忘れられない恐怖の記憶。10代のときに裸の写真を撮られた日のことは、今なお最も暗い記憶の1つだ。
現代では、女性の体を搾取することがかつてないほど簡単になった。AI(人工知能)を使ったディープフェイクのヌード画像やポルノが大流行して、世界中の女性が私と同じように痛切なトラウマに直面する可能性がある。
子供への性的虐待とAIによる性的搾取には、共通点がある。どちらも犠牲者の同意なしに、十分な理解や知識がないまま行われるのだ。
子供に対するこの種の残酷な行為は、癒やすことがほとんど不可能な心の傷を残す。私も傷が癒えるまで、とても長い時間がかかった。
自分が耐え続けた、想像を絶するシーンが何度もフラッシュバックした。夜は悪夢にうなされ、この悪夢は覚めないのかもしれないと思った。
それでも、やがて悪夢は収まった。私はジャーナリストになり、世界でも問題の多い地域を取材して、人権侵害の現実を多くの人に届けている。リビアでレイプ被害者にインタビューをして、ウクライナの前線で女性や子供に対して行われている戦争犯罪の記事を書きながら、自分なりの癒やしを見つけてきた。
サイバー性暴力の恐怖
そして今、私は初めて、自分自身の証言を報道に使っている。何よりも重要なのは、虐待をやめさせて、加害者を罰することだ。
サイバー暴力とサイバーポルノを犯罪とする新しい法律の検討も始まっているが、私は性的虐待のサバイバーとして、もう待つことはできないのだと強調したい。多くの国で法律の空白が立ちはだかり、サイバー暴力が実際に確認されても、告訴されないケースはたくさんある。
女児の体は物ではない。そして性的虐待の不名誉は、被害者ではなく加害者が負うべきだ。加害者に対する法的措置は、即座で、かつ重大なものでなければならない。
性的暴力は、女性の心を傷つける最も悪質なやり方の1つで、その傷は永遠に残る場合もある。そして、戦争の武器にもなる。サイバーポルノを、女性を残忍に扱い、トラウマを植え付け、黙らせる新たな手法にしてはならない。
-
-
- 1
- 2
-
この記事に関連するニュース
-
笑うしかないけれど、遅効性の毒みたいな映画 「男女残酷物語 サソリ決戦」を見て考えた、女が男に復讐する映画と古い知人【二村ヒトシコラム】
映画.com / 2024年6月14日 22時0分
-
「気がつくと2時間泣き続けていました」女性漫画家が語る、毒親・性被害のトラウマと回復
日刊SPA! / 2024年6月14日 8時50分
-
DV被害者が相談して気付く"私が間違っているんじゃないんだ"...警察など『DV相談8万件超』過去最多 DV加害者を支援する加害経験者も「人は学び変わることができると信じて」
MBSニュース / 2024年6月12日 12時16分
-
「Netflixストーカー実話」海外と日本で温度差の謎 売れない芸人が主人公「私のトナカイちゃん」
東洋経済オンライン / 2024年6月1日 12時30分
-
「同意のない妊活」は不同意性交等罪になる恐れ…「夫婦間ではレイプは成立しない」が誤解である理由
プレジデントオンライン / 2024年5月29日 9時15分
ランキング
-
1ウクライナ平和サミット、領土一体性の原則など共同声明を採択…インドや南アは支持表明せず
読売新聞 / 2024年6月16日 22時36分
-
2ロシア機、バルト海でスウェーデン領空侵犯
AFPBB News / 2024年6月16日 16時55分
-
3ロシアの拘置所で男ら立てこもり…特殊部隊により制圧 「イスラム国」と関係か
日テレNEWS NNN / 2024年6月16日 18時31分
-
4イタリアのメローニ首相「この2年で日本との協力は大きく前進した」…G7サミット総括会見
読売新聞 / 2024年6月16日 18時31分
-
5イスラエル軍、軍事活動を一時停止=ガザの一部で、支援強化狙い
時事通信 / 2024年6月16日 16時50分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)