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ハーバード大学准教授が語る「メンタル危機」になる前のセルフケア...認知療法で使われる技術とは?

ニューズウィーク日本版 / 2024年5月30日 11時13分

「自尊心とオーナーシップ」がメンタルヘルスを支える土台に

──内田さんは「自尊心とオーナーシップ」の大切さについても書いていました。その中身について改めて紹介していただけますか。

モニタリングのステップやセルフケアの方法を知ることも大事ですが、それを実行する自分自身のコアマッスルを鍛えることも大事です。そのコアマッスルが「自尊心とオーナーシップ」で、この2つがメンタルヘルスに影響します。

自尊心は「ありのままの自分をリスペクトする気持ち」。自尊心が育っていれば、あまり認めたくない感情を受け入れることができます。一方、「オーナーシップ」とは「自分が何を選択するかは自分が決める」という姿勢のこと。選択とその結果を、自分のものとして所有するイメージです。

「一生懸命考えてこういう選択をしたんだ」と思えていれば、その結果が期待と違っても受け入れられるんですよね。意思決定の多くは、経済や社会状況などの外的要因が絡むものですが、自分がコントロールできる範囲とそうでない範囲に気づきやすくなります。

たとえば、ある場面で被害者になったとします。加害者が被害者をコントロールして、被害者を孤立させたり「自分の感じ方が変なのか」と思わせたりするかもしれません。そんな状況に陥ることを「ガスライティング」といいます。こんな場面でも、オーナーシップがあると、「この選択でいいんだ」と自分にOKを出しやすくなり、結果的に相手にもよい方向に働きかけができると思うんです。

身近な他者に「オーナーシップ」を感じられる機会をつくる

──オーナーシップは子どもの頃から自分の提案が受け入れられる経験を通じて育っていく、と本書にありました。大人になってからもオーナーシップを育てるために何ができるでしょうか。

日本では、少なくともアメリカで過ごしているときよりも、オーナーシップを感じられる機会が少ないのが現状です。「こういうシーンではNOと言っていい」という判断を学べる機会も少ないし、「NOと言っても何も変わらない」と、諦めが生まれていることもあります。

そんな状況下でも、オーナーシップを育てる方法は2つあります。1つは、自分に適切なオーナーシップが与えられていないのなら、その分、身近な他者にオーナーシップを感じさせる機会をつくること。自分が不満を感じたことは、子どもや部下など次世代の人がなるべく感じなくて済むよう働きかけていく。それは、たとえ小さなアクションでも、社会の雰囲気を変えていく一歩になります。「私には(人に働きかけて)コントロールできる部分がある」と実感できますし、めぐりめぐって自分自身にもよいものが返ってくると思います。

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