「信じ難いほど不人気...」ガザ戦争で逆風のバイデン、再選のカギ握るのは「激戦州の少数派」
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月5日 10時43分
もちろん、若者がアメリカの外交政策に不満を抱くのはこれが初めてではない。現在の抗議活動はイラク戦争とベトナム戦争に反対する抗議活動が2004年と1968年の大統領選を特徴付けたのと比較される。
だが今回の選挙の特徴は、この2回と違って米軍部隊が中東やヨーロッパで地上戦を繰り広げていないことだけではないと専門家は指摘する。
キング牧師暗殺後の暴動で廃墟と化した街(1968年) CHICAGO HISTORY MUSEUM/GETTY IMAGES
アメリカは今、ベトナム戦争やイラク戦争の頃よりはるかに党の方針に沿って二極化している。バイデンの国際協調路線とトランプの孤立主義は、外交政策をめぐってより厳しい選択を有権者に迫ると、歴史家らは言う。
ソーシャルメディアも一般市民が外国の出来事について情報を収集する方法を変え、ガザをめぐる世論の世代間ギャップを広げている。
「20年前は若者と高齢者の情報源はもっと重なっていた」と民主党の世論調査専門家レイクは指摘する。昨今は「若い世代はTikTok(ティックトック)が一番の情報源」で、主流のニュース主体の上の世代に比べてガザでの暴力映像に触れやすいという。
「若者と高齢者は異なる2つの別々の戦争を見ている」
今回の大統領選はガザとは無関係の要因でも過去の大統領選とは違っている。二大政党の候補者が共に70歳を超えていて、再選を目指すトランプは4つの刑事裁判(本人によれば「政治的迫害」)に直面している。
ほとんどの有権者は外交政策ではなく、経済、移民、中絶などの問題を重視するはずだと、共和党の世論調査専門家ロバート・ブリザードは本誌に語った。「今回はバイデンの経済運営に対する評価とトランプの人格に対する評価が争点になる」
それでも過去のアメリカの政治における転機を思わせる側面は残っていると、アラブ・アメリカ研究所のゾグビーは言う。ベトナム戦争は68年の大統領選がニクソン有利に傾いた唯一の要因ではないが「非常に重要な役割を果たしたのは確かだ」。
進歩的な若者をはじめバイデンがイスラエルを支持していることに憤る有権者にとって選択肢は「トランプかバイデンかではなく、バイデンに投票するか誰にも投票しないかだ」。
今回の大統領選は異例だらけ
バイデン支持者は最終的にはトランプではなくバイデンを支持するはずだと、バイデン陣営は踏んでいる。秋には左寄りの有権者は今回のトランプの選挙公約に目を向けるに違いないと、民主党は考えている。
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