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「インドの民主主義は死んでいない」モディとBJP一強時代の終わり、圧倒的なリーダーの存在がアキレス腱に

ニューズウィーク日本版 / 2024年6月11日 14時45分

自信過剰は「何をやっても許される」という勘違いを生む。その危うさを裏付けるように、インドの情報機関が北米でモディ批判者を黙らせようと暗躍しているという疑惑が浮上した。

BJPはその傲慢さ故に、自分たちの足をすくう3つの要因を見逃すことになった。

その1つは、インドの選挙制度では、政権与党は必ずしも国民の過半数の支持を得ていないという明白な事実だ。小選挙区制では死に票が多くなる。与党は政権批判の票が割れれば有利になるから、弱小野党の林立を望む。

BJPは力を持つにつれ権威主義的になり、野党とその指導者に圧力をかけた。結果、野党は弱体化する代わりに結束した。生存を懸けた戦いほどパワーが出るものはない。にわかづくりの野党連合は野合にすぎないと批判されたが、今回の総選挙でアンチBJP票の分散をある程度回避できた。

2つ目は、どんな政治理念にも賞味期限があること。第2次大戦後のケインズ式の大きな政府は4半世紀持った。それに取って代わった新自由主義は約30年。どちらも今や時代遅れだ。

インドでは世俗的で社会主義的な理念が半世紀近く持ったが、ご都合主義に傾いて支持を失い、多数派のヒンドゥー教徒の不満に乗じて台頭したBJPに支配基盤を切り崩された。

民主主義は死んでいない

だがヒンドゥー・ナショナリズムにも賞味期限はある。BJPは今回の総選挙に向けてヒンドゥー教の主要な神であるラーマ神ゆかりの地にあったモスク(イスラム礼拝所)の跡地に、ヒンドゥー教の大寺院を建設すると誓い、その約束を果たした。

だが、この「偉業」は期待したほど票につながらず、BJPはそのゆかりの地で自党候補が敗北するという屈辱を味わった。

大衆におもねることが支持率アップにつながるのは確かだが、インドは複雑なモザイク社会。有権者の要求も単純な二分法では色分けできない。

3つ目は、有権者を日常的に苦しめている諸問題はイデオロギーでは解決できないこと。インドの有権者の不満はこの国の経済社会構造の病弊に深く根差している。処方箋は一筋縄ではいかない。

最も厄介な症状はまともな雇用を十分に提供できないこと。学歴は立派なのにスキルは乏しいインド人がどんどん増える現状が、悲しいかなインドの教育制度の質の低さをあぶり出している。

インド経済は製造部門の強化に必死に取り組んでいる段階だ。そのため夢を描いて高等教育を受けた若者は不安定な雇用という壁にぶつかることになる。不遇をかこつ大勢の若者が一斉に怒りの声を上げる日がいずれ来るだろう。

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