フィンランドが「世界一幸福な国」でいられる本当の理由...国民の安全を守る「国防」の現実
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月18日 19時43分
事実、ロシアのウクライナ侵攻後、国民の90%がNATOへの加入に賛成し、NATOの作戦にフィンランド軍を送ってもいいと答えている。さらにフィンランド国民の98%は自分の国を守りたいと答えており、この割合は世界でも3位に高く、欧州では最も高いという。NATO加盟に支持が高いのは、国民が安心や幸せを感じるのに、国を守る必要があると考えたからに他ならない。
筆者は今回、フィンランドのアレクサンデル・ストゥブ大統領にインタビューすることができた。アジアのメディアとしては初のインタビューになる。そこで、すでに世界一幸せな国が、なぜ軍事同盟に加盟するのか、その理由を聞いてみた。
ストゥブ大統領は、「国の安全保障が幸福につながっているなら、NATOに加盟するのは当然だ」と述べる。国民の幸福の鍵の一つに国防意識があるということだが、ストゥブ大統領は「私たちにとって対外的な安全保障政策は実存的なもの」であり、「幸福度はかなり主観的なものだが、NATOの枠組みの中で活動できることに加えて、教育、自然、信頼、福祉、一人当たりのGDPなども要素になる」と話した。
インタビューに応じたフィンランドのアレクサンデル・ストゥブ大統領
フィンランドは国を守るために「包括的安全保障」という安全保障戦略を提唱している。その戦略では、「リーダーシップ」「世界とEUの活動」「国防能力」「国内治安」「経済、インフラ、供給源の安全」「国民やサービスの機能的能力」「心理的回復力」の7つの要素が鍵となっており、これらがダイアモンドの形を作って相互につながっていくことで国家の安全保障を包括的に守っていくことになる。
フィンランド国防省の安全保障委員会のペッテリ・コルヴァラ事務局長は、「これら7つの機能を、あらゆる状況下において維持する必要がある。つまり、日常業務でこれらを実行し続けることで、すべての潜在的な脅威に備え、必要に応じて脅威に抵抗し、それが現実のものとなったときに脅威から回復できるようにするのも大事だ」と語る。
フィンランド国防省安全保障委員会のペッテリ・コルヴァラ事務局長
隣国の旧ソビエト連邦(ロシア)の存在
フィンランドの「包括的安全保障」は、もともと隣国の旧ソビエト連邦(ロシア)の存在によって形作られてきた。「私たちの社会全体のモデルは歴史に深く根ざしている。第2次大戦後から冷戦時代にも独立して安全保障を守る準備を続け、それを包括的安全保障に昇華してきた」と、コルヴァラ事務局長は語る。
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