1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

フィンランドが「世界一幸福な国」でいられる本当の理由...国民の安全を守る「国防」の現実

ニューズウィーク日本版 / 2024年6月18日 19時43分

東欧地域では1991年のソビエト連邦の崩壊で脅威状況が一変した。旧ソ連の国々が独立し、それぞれが欧州の西側諸国との関係で立場を示す必要が生じた。その変化は1917年から独立国だったフィンランドにもおよび、フィンランドは1995年にEU(欧州連合)に加盟。それまで築いてきた独自の安全保障政策から、より欧州諸国と相互に結びついた安全保障にシフトし、2023年にはロシアの軍事活動を受けて、国民の求めに呼応してNATOに加盟した。

「世界一幸せな国」の実像として意外に思うかもしれないが、こうした国防意識は深く社会にも根付き、国民に安心を与える材料となっている。その一例は、シェルターの存在が挙げられる。

人口550万人のフィンランドには、5万500カ所のシェルターが存在し、有事の際には合計で480万人を収容することができる。そのうちの公共シェルターは約200カ所。シェルターの91%がミサイルなどの攻撃にも耐えうるもので、83%はガスや放射線に対しても安全だという。

フィンランド国民の安全を守る公共シェルター

筆者が訪問したヘルシンキ市内の140戸ほどの集合住宅では、法律でシェルターの設置が義務付けられている。平時には住民のロッカールームとして機能し、ミサイル攻撃や武力侵攻など国外からの脅威が迫った場合にはすべての住民を守るシェルターとなる。有事の際には国内のすべてのシェルターが72時間以内に完全に使えるようにする必要がある。

「そのために、毎年業者が来て、シェルターの機能を維持するためにチェックをして、もしもの場合に備えています」と言うのは、この集合住宅で住民代表を務めるオスカリ・オヤラ氏だ。

「有事の際に避難する人のために、仮設トイレも設置されていますし、シャワーを浴びることができるテントも用意されています。シェルター内の空気を交換するための独立した換気口も設置されている。また、放射能汚染に備えて、避難民全員が摂取できる安定ヨウ素剤も常備しています」

フィンランドの街中には、自治体が保有する大規模な公共シェルターも存在する。そのうちの一つ、ヘルシンキ市メリハカ地区のシェルターは、地下30メートルほどにある岩盤を掘削して作られたものだ。

フィンランド国民を守るシェルター内部の様子

フィンランド国民の安全を守る公共シェルターの内部

広大なシェルター内を歩くと、空気がひんやりとしているのがわかる。ヘルシンキ市救助局のコミュニケーション・スペシャリスト、ニナ・ヤルヴェンキュラ氏は、「ここでは、有事の際には6000人ほどを収容できます。住民だけでなく旅行者でも外国人でも分け隔てなく受け入れます」と話す。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください