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Mrs. GREEN APPLEのMV「コロンブス」炎上事件を再発させない方法

ニューズウィーク日本版 / 2024年6月18日 18時54分

Mrs. GREEN APPLEの大森元貴氏は13日に「差別的な内容にしたい、悲惨な歴史を肯定するものにしたいという意図」はなかったと釈明し「配慮不足」を謝罪した。所属するユニバーサルミュージック合同会社も「歴史や文化的な背景への理解に欠ける表現が含まれていた」として謝罪している。確かに今回のMVについては、クリエイティブに関わった人々の「集合知」ならぬ「集合無知」が意図せずに形成されてしまった側面がある。

しかし、コロンブスがキャンセルカルチャー(広義には「特定の人物・団体の言動を問題視し、集中的な批判を浴びせて表舞台から排除しようとする動き」を、狭義には「現代の基準から不適切だと思われる功績を過去にさかのぼって否定する」風潮をいう)の象徴的存在であることは、現代の日本で「衆知の事実」とまでは言えない。アーティストがコロンブスの位置付けの逆転や国際潮流としてのキャンセルカルチャーの視点を知らなかったとしても、それだけで非難するのは酷だろう。iPhoneやPCのOSと異なり、何かしらの創作物を作り出す土台となる「視野」は自動的にアップデートされることはない。大切なのは個々人のアップデート力と知的怠惰に問題を収斂させるのではなく、炎上を防ぐ仕組みを構築することではないだろうか。

創作を支えるサポート・助言体制を構築・強化せよ

筆者はかつて「カルチュラル・アプロプリエーション」(Cultural appropriation)つまり「何らかの表現活動を行うにあたって、多数派・支配的な立場にある者が、少数派・従属的な立場にある者の文化を、敬意を払うことなく「流用」したり、歴史的文脈を無視して「引用」したりすることへの非難」の問題を取り上げ、広告等の表現活動が「文化の盗用」の非難を浴びせられるリスクを回避するために必要な判断枠組みを考察したことがある(「伝統文化の「盗用」と文化デューデリジェンス −広告をはじめとする表現活動において「文化の盗用」非難が惹起される蓋然性を事前精査する基準定立の試み−」)。

今回の「キャンセル・カルチャー」の問題と「カルチュラル・アプロプリエーション」は同じではないが、炎上を防ぐ考え方として一つの参考になると思われるので、簡単に紹介しよう。

まず、非難を浴びるリスクを客観的に想定することが重要だ。「文化の盗用」という文脈では、アイヌの文化であったり和服の帯であったり、その維持に多大の努力が払われている少数文化や伝統文化に該当するか否かを、例えばユネスコの「無形文化遺産一覧表」を参照して把握する。2021年には和服の帯を踏んづけるヴァレンティノのCM 動画が炎上したが、そもそも「文化の盗用」という批判を避けるためにはその炎上可能性を客観的に把握することが必要となる。

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