「サウジアラビア v アラブ首長国連邦」中東地域の主導権をめぐる静かなる地政学争い
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月19日 13時12分
こうした規制はUAE経済の根幹をなすフリーゾーンに真っ向から挑戦するもので、UAEとイスラエルの貿易関係が発展することに対する明確な反論である。
アメリカの中東政策に打撃
その対イスラエル政策でも、両国の距離が開く可能性がある。UAEは20年にアメリカの仲介でアブラハム合意に署名し、イスラエルと国交正常化を果たしたが、サウジアラビアは署名を見送った。イスラエルとUAEは包括的な経済協定を結ぶなど、2国間関係を強化している。
イスラエルとハマスの戦争は、サウジアラビアとの国交正常化のプロセスを減速させている。しかし、サウジアラビアはアブラハム合意の礎になるべき存在であり、対話は復活するだろう。
ムハンマド・ビン・サルマンがイスラエルとの国交正常化に向けて、特に核開発や安全保障面でさらなる譲歩を探っても不思議ではない。そうした動きは、UAEのムハンマド皇太子の対イスラエル政策に圧力をかけるだろう。
サウジアラビアとUAEの溝が広がるにつれて、互いの「重り」として、ロシアや中国、さらにはイランとの関係改善が加速することが考えられる。その結果、アメリカの中東戦略の有効性が弱まり、アメリカは中東の重要性を再評価することになるかもしれない。
イスラエルとハマスの戦争が勃発したように、サウジアラビアとUAEの地政学的な競争激化が、中東はより平和になるという単純な見方を覆す可能性は十分にある。
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