イランの核武装への兆候か? イスラエルとの初交戦と大統領墜落死が示すもの
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月27日 12時40分
イラン国内の核に関する議論の転換を後押しする3つの要因のうち、「最も重要なもの」は敵対国の動向に対する懸念だと、サベットは本誌に語った。具体的には4月に起きた危険な武力の応酬(イスラエルがシリアのイラン大使館領事部を攻撃し、その報復でイランがイスラエルに大量のミサイルとドローン〔無人機〕を発射。イスラエルがイランの防空施設を再報復攻撃)だという。
「イラン政府当局者や要人による4月の核に関するサインは、かなりの部分までイスラエルへの牽制と、イランの核施設を標的にしたイスラエルの報復攻撃をアメリカにやめさせることが目的だったようだ」
一方「一般的に言って、転換を後押しする第2、第3の要因は」と、サベットは話を続けた。「制裁の解除につながるような核交渉の実現が見込めないこと。それにアメリカの現政権か次期政権が、イランに対する軍事的または経済的締め付けを強化するのではないかという懸念だ」
「安全が保障されれば核は不要」
イランは発効当初の70年からNPTに加盟してきたが、制裁解除を期待できなければ、脱退を検討する可能性もあると指摘する専門家もいる。
「イラン政府はNPTに残留し、核兵器開発を自粛しているのに、制裁を強化されるという流れを容認できないだろう」と、本誌に語るのは、00年代半ばに欧米との核交渉に当たったイランの元外交官で、現在はプリンストン大学の「科学および国際安全保障」プログラムの中東安全保障・核政策専門家を務めるホセイン・ムサビアンだ。
「問題は核だけではない」と、ムサビアンは言う。イランはNPTに加え、化学・生物兵器など大量破壊兵器や民間人を無差別に殺傷する兵器の開発を禁止する条約を締結している。にもかかわらず、外交的、経済的、軍事的に猛烈な圧力をかけ続けられているというのだ。
「過去何十年も世界の列強がイランに誓約を守らせようと、イランからさまざまな権利を奪ってきた」と、ムサビアンは言う。「そんなことがいつまでも続くはずがない」
イラン国内にも核政策転換の兆しに注目している人たちはいる。
テヘラン在住の安全保障アナリスト、アリレザ・タガビニアによると、核政策を変えられるのは、権威あるイスラム法学者でもあるハメネイただ一人だ。けれども国家の存続が脅かされたとなれば、信仰を根拠に政策転換を論じることが可能になると、タガビニアは本誌に語った。「イスラムでは人々の生存と生活を守ることが何より重要とされる」ので、「国民の命と国家の存続が危うくなれば、話は違ってくる」というのだ。
この記事に関連するニュース
-
イランで核兵器取得論争が活発化~イスラム体制の形骸化招く可能性も
Japan In-depth / 2024年6月29日 18時4分
-
イラン大統領選の投票始まる いまの保守強硬路線を継続?それとも改革派? ヘリ墜落事故で前大統領の急死を受けて
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年6月28日 13時22分
-
池上彰「第三次世界大戦は起きない」と考える理由 人類が「2度の世界大戦」から学んだこととは
東洋経済オンライン / 2024年6月16日 18時0分
-
ロシア、核保有国との対話打ち切らず 米が配備拡大なら対応
ロイター / 2024年6月10日 10時0分
-
米大統領選でガラリ…オバマ政権とトランプ政権から考えるイランとの関係 国際情報の専門家が分析
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月4日 9時26分
ランキング
-
1焦点:少年院でギャングが勧誘、スウェーデンで増える銃犯罪
ロイター / 2024年6月30日 7時54分
-
2北朝鮮の朝鮮労働党中央委員会が金正恩総書記の生母・高容姫氏の記録映画や映像の破棄を命令 日本生まれの出自を懸念か
NEWSポストセブン / 2024年6月30日 7時15分
-
3ロシア、短・中距離核ミサイルの生産再開へ プーチン氏が表明 米国への対抗と主張
産経ニュース / 2024年6月29日 20時30分
-
4蘇州の邦人切り付け、無差別か 中国人男、社会に不満も
共同通信 / 2024年6月30日 16時21分
-
5精彩欠いたバイデン氏、NYタイムズが「強力な人物必要」と撤退促す…トランプ氏「年齢ではなく能力の問題」
読売新聞 / 2024年6月29日 18時13分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)