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パリ五輪直前に突然の議会解散・総選挙という危険な賭けに出たマクロン大統領の成算と誤算

ニューズウィーク日本版 / 2024年6月26日 18時0分

マクロン流の読みと成算

しかし問題は、そのタイミングである。
大統領としての任期5年の中間点に近づきつつあるマクロン大統領にとって、残された時間は日々減っていくばかりで、来年度予算(フランスの会計年度は1~12月の暦年)の編成を解散総選挙後の新しい議会の下で行おうとすれば、議会における予算審議が始まる今秋がギリギリのタイミングとなる。しかし、夏にはパリ五輪が控えており、その後は国を挙げてバカンスに入るので、それが明けた初秋あたりが常識的な線だと見られてきた。

そうした常識を覆して、マクロン大統領が、パリ五輪前で欧州議会選挙直後というこのタイミングを選んだのは、欧州議会選挙での敗北というショックによるのではなく、むしろ国民連合の躍進というショックを逆手にとって、「極右」に拒否感をもつ左右穏健派を「反極右」で結集・糾合することで総選挙での勝利が可能と考える、マクロン流の読みと成算があったからだ。

下院議員選挙の小選挙区2回投票制は、そうした「極右」と「反極右」という2つのブロックの間の対決という構図を作るのに絶好の選挙方法だ。第1回投票での上位数名が第2回投票に残れるが、第3位の候補が立候補辞退したり、第1回投票のあとに選挙結果次第で選挙協力の組み換えや再調整がおこなわれたりして、結局第2回投票は、第1回投票の上位2名での決戦となることが多い。しかも、第2回投票では2人の間で逆転が生じ、第1回目で第2位の候補が決戦を制することもたびたびある。

こうした戦術を成功させるためには、上位2位以内に付けておくことが、極めて重要となるが、マクロン与党は、欧州議会選挙で国民連合の後塵を拝したとはいえ、かろうじて他の政党を抑えて第2党のポジションを確保した。マクロン与党が第2党となることを脅かす可能性のある左翼連合は、中東紛争に対するスタンスの違いが表面化したことで、急進派と穏健派の間で対立が深まり、分裂状態に陥っていた。分裂したままで臨んだ欧州議会選挙では、個々の党別では票を伸ばした政党もあったが、逆に左翼連合としての弱体化を曝け出した。こうした状況は、マクロン与党にとって、来るべき下院議員選挙でも2位以内に入る可能性を与えていた。

マクロン大統領の誤算

ところが、ふたを開けてみたら、それは誤算であったことがすぐに明らかになった。
マクロン与党への求心力はマクロン大統領の思惑通り働き始めたが、それをはるかに上回る大きな遠心力が発生した。今回の強引な決定が、マクロン大統領の政治手法に対する大きな反発を呼び、左右両派においてマクロン離れの動きを招いてしまったのだ。

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