1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

パリ五輪直前に突然の議会解散・総選挙という危険な賭けに出たマクロン大統領の成算と誤算

ニューズウィーク日本版 / 2024年6月26日 18時0分

分裂していた左派では、「反マクロン」で共同戦線を組もうという再結集の動きが急速に進み、急進左派から社会党右派まで(「メランションからオランドまで」)ほぼすべての左派勢力が大同団結した、新たな左翼連合「新人民戦線」が立ち上げられた。

一方右派の側でも、「反マクロン」の遠心力が強まった。
それは、「極右」への擦り寄りという形で現れた。共和党内に潜在的にあった内部分裂が顕在化したものだが、ショッティ党首が秘密裏に国民連合と接触して、独断で選挙協力・連合を組むという方針を発表したのだ。

これに対し「反極右」路線を堅持してきた他の党幹部は一斉に反発し、ショッティ党首の解任を決めたが、即時抗告の裁判の結果、解任は認められず、ショッティは党首のまま、国民連合との連合が成立した形となっている。

その結果、ショッティ派の「共和党」と国民連合が連合したブロックが一方において存在し、反ショッティ派の「元祖共和党」がもう一方において存在するという、支離滅裂の状況が生じている。ショッティ派「共和党」からは約60名程度が立候補し、「極右」勢力を補強している。

こうした政党・政治家レベルでの政界再編が、有権者レベルでの政治勢力関係、ひいては投票による選挙結果に、どう結びつくのかはふたを開けてみないと分からないが、上述の世論調査によれば、国民連合の第1位(35%)は揺るがないが、新たな左翼連合が第2位(29%)に浮上し、マクロン与党は第3位(21.5%)に落ち込んでいる。この傾向が総選挙でも表れれば、マクロン与党が決選投票に進めるチャンスはほぼ絶望的だ。

カギとなる投票率

最後の頼みの綱は、再び小選挙区2回投票制のカラクリだ。第2回投票に残るために乗り越えなければならない壁は有権者数の12.5%とされているが、この壁は投票率が上がれば低くなり(例えば投票率75%の下では、得票率ベースで16.7%に相当)、下がれば高くなる(例えば投票率50%の下では、得票率ベースで25%に相当)。

予想得票率21.5%のマクロン与党にとって、この壁は厳しい。
選挙区によっては、この壁を乗り越える場合もあるだろうが、そうでない場合もあろう。総体的にみれば、投票率が上がれば上がるほど、第2回投票に残って3党間での決選投票に持ち込めるケースが増えるということになる。

最近の世論調査に基づく予測では、投票率は64%と推定される。
投票率が64%であれば、この壁は得票率ベースで約20%に相当し、予想得票率21.5%のマクロン与党はかろうじてクリアできることになる。この趨勢が維持されれば、個別には選挙区次第ではあることに変わりはないが、総体的には何とかギリギリで第2回投票に残って3党間での決選投票に持ち込めるケースが多くなると言えそうだ。
いずれにせよ、投票率が極めて重要なカギとなることは、間違いない。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください