緊迫するイスラエルとヒズボラの影で、イランが狙う「終わりなき消耗戦」と戦争拡大の危険性
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月2日 14時21分
ガザ戦争の比ではない
ナスララは、イスラエル北部の要衝ハイファを攻撃する可能性も示唆した。
ハイファは同国第3の都市で、国内人口の8分の1が居住し、重工業が集中している。最重要の港湾施設と海軍基地の所在地でもある。ハイファがやられたら、イスラエルは直ちにレバノンへ攻め込むことだろう。そうなれば全面戦争だ。
ヒズボラは今もイスラエルに向けて15万発のロケット弾の照準を合わせており、テルアビブやその周辺も射程内に入るという。そうであれば、対ヒズボラ戦のコストは現在のガザ戦争をはるかに上回るものになる。
当然、イスラエル経済には悲惨な影響が出るし、既に事実上の破綻国家となっているレバノン側の影響は一段と深刻だろう。
ヒズボラのミサイルの多くは、民間人が居住する地域の地下貯蔵施設に格納されている。そうしたミサイルの発射を未然に防ぐには、地下施設に素早く到達する必要があり、そのためには地上侵攻が不可欠だ。しかし、そうなれば多くのイスラエル兵が犠牲となり、巻き添えで命を落とす民間人の数も膨らむ。
全面戦争になれば、イランは大量の弾道ミサイルを発射してイスラエルの防空網を突破しようとするだろう。それが現実となって主要都市にミサイルが落ちたら、もうイスラエルは自制を求める声に耳を貸さなくなる。そこから戦火がどこまで拡大するかは、誰にも予測できない。
Michael Ben-Gad, Professor of Economics, City, University of London
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
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