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フランスの「極右」が「極右」と呼ばれなくなる日

ニューズウィーク日本版 / 2024年7月2日 17時30分

2011年に2代目党首に就任した娘のマリーヌ・ルペンは、この「脱悪魔化」路線の下、生活苦や治安の悪化に悩む庶民の味方、フランス人の権利を第一に考える愛国者、それでいてリベラルで個人主義的な家族政策や女性の権利拡大にも熱心なフェミニスト、というソフトなイメージを、国民の中に植え付けることに成功した。このイメージ・チェンジは、2018年に党名を今の「国民連合」に変えたことで、さらに確かなものになった。

この「脱悪魔化」は、イメージだけではなく、政策のレベルでも具現されている。
今の国民連合の公約を見ても、かつてのEU離脱やユーロ離脱などの過激な主張は姿を消し、移民規制の強化といっても、国籍付与にあたっての出生地主義の廃止(すなわち血統主義の採用)や、二重国籍者の権利制限、不法滞在者への罰則強化など、海外の多くの国(日本を含む)が実施している規制と同じ程度のものを主張しているにすぎない。

また、燃料・エネルギーに掛かる消費税の引下げや、社会党政権時代に導入されマクロン政権下で廃止された金融資産課税(いわゆる富裕税)の復活、マクロン政権が行った年金改革(年金受給開始年齢を62歳から64歳に引き上げることなどが柱)の撤回などは、「金持ち優遇のエリート」のマクロン大統領とは正反対の、やさしい庶民の味方を印象付ける。

マクロン政権への不満

こうした「脱悪魔化」と裏腹に、フランス国民の間ではマクロン政権に対する不満が強まっていった。

物価高や重税に伴う購買力の低下、年金支給開始年齢の引上げに伴う社会保障の後退、ウクライナ戦争の影響による燃料・エネルギー価格の高騰などにより、庶民の生活は苦しくなる一方なのに、それに目をつむったかのように、平然とグローバル化とEU統合を進めているマクロン大統領に対する国民の不満は高まる一方だった。
また、移民の多く住む都市の郊外地区を中心にして、治安の悪化が恒常化しており、マクロン政権がそれに有効に対処していないとの不満も鬱積していた。

こうした不満を吸い上げてマクロン大統領を舌鋒鋭く批判する国民連合に共感する人々が、底辺層から中間層、更に右派支持層にまで広がって、国民連合の支持基盤の拡大につながったのだ。

国民連合の支持基盤の全般的拡大

そのことは、最近の選挙結果や世論調査に如実に表れている。
先の欧州議会選挙では、パリを除く全国ほぼすべての地域で、国民連合が第1位となった。国民連合支持者の多寡は、これまでは地域的に偏りがあったが、今やほぼ全国均一に国民連合の支持者が他のすべての政党の支持者を上回っている。

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