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クリップスとブラッズ、白人至上主義、ヒスパニック系...日本人が知らないギャング犯罪史

ニューズウィーク日本版 / 2024年7月4日 18時20分

いまでは州のヒスパニックの刑務所(プリズン)ギャングとストリート・ギャングの大半が、セントラル・バレーの南の端を東西に横切る見えない線によって大まかに分けられ、スレーニョスかノルテーニョスのどちらかとつながっている。

かなり前から刑務所で特に深刻な問題になっている白人至上主義のギャングは、戦闘的な集団であるのを示すために、「ペッカーウッズ」と名乗ることが少なくない。この呼び名は、もともと貧しい白人を意味する19世紀のアフリカ系米国人のスラングで、当時は軽蔑的な意味で使われていたのだが、1960年代の激動のなかで団結を目指した人種差別主義者の白人の囚人たちがそれを拝借した。

白人至上主義のプリズン・ギャングで最初にできたのは、公民権法の成立からまもなく、サンフランシスコ近郊のサン・クエンティン州立刑務所でマルクス・レーニン主義に影響を受けたブラック・ゲリラ・ファミリー(BGF)に対抗して誕生したアーリアン・ブラザーフッド(AB)である。

疑い深く、神経過敏で、偏見に凝り固まったABは「殺しを経験する(メイキング・ワンズ・ボーンズ)」なる冷酷な加入条件を設けた。

加入を希望する者は、敵対するギャングのメンバーや、人種の違う囚人か看守に暴行を加えるか、殺すことを要求された。こうして、容易に手に負えない人種間戦争が始まり、またたく間に米国の大部分の刑務所へと広がっていった。

ペッカーウッズは刑務所だけでなく、次第にストリート、とりわけ南カリフォルニアのストリートで数を増していった。現在、更生もせずに釈放された囚人が、委託殺人や個人情報窃盗、武装強盗、メタンフェタミン(訳注 覚醒剤の一種)の製造など、考えられるかぎりの犯罪にかかわっている。

こうした集団は、鉤十字や88という数字などのネオナチに典型的なシンボルを好んで身につけていても、だいたいがイデオロギーより金銭欲に突き動かされ、別の人種のギャングと業務提携することもいとわず、大金を得られる事業に手を出す傾向がある。ただし、黒人と手を組むことはない。

いまや戦いの第一目標は利益になったとはいえ、白人至上主義のギャングはなおも人種の問題をなおざりにはしていない。メンバーには、70年前と変わることなく黒人の家族に嫌がらせや脅迫をして、住んでいる場所から追い出す悪質な者がいるし、人種憎悪をあおる発言も、新たなメンバーを引き寄せて取りこむために、いまでも刑務所で使われている。

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