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これからの蚊対策は「殺さず吸わせず」 痒いところに手が届く、蚊にまつわる最新研究3選

ニューズウィーク日本版 / 2024年7月12日 18時50分

低粘度シリコーンオイルの有効性のメカニズムをさらに詳しく調べるために、同社は理化学研究所(理研)とともに蚊の観察に特化した仮想空間を構築し、研究を続けています。

本年3月にオープンアクセス科学総合誌「Scientific Reports」に発表した論文によると、①蚊の脚に低粘度シリコーンオイルがつくと、動くものを追いかける能力が低下する、②蚊は低粘度シリコーンオイル付着時(嫌な経験)のニオイを記憶し、同じニオイに対して回避行動をとる、ことが分かりました。いずれも「強い化学物質である忌避剤を使わない、新時代の虫除け」を開発する上で、大きなヒントになりそうです。

低粘度シリコーンオイルの虫除けクリームやスプレーは、蚊媒介感染症による被害が深刻な東南アジアでの流通を目指している商品で、残念ながら日本国内では未発売です。もっとも、とくに小さな子供がいる家庭では高い関心を持たれそうな製品なので、近い将来に国内でも入手しやすくなるよう期待しています。

2.蚊は安全のために腹八分目で吸血を止める?

理研の佐久間知佐子上級研究員、東京慈恵会医科大の嘉糠洋陸教授らの研究チームは、哺乳類の血液中にあるフィブリノペプチドA(FPA)という成分が、ネッタイシマカの吸血を停止させるシグナルとして働くことを発見しました。研究成果は生命科学系のオープンアクセス誌「Cell Reports」に6月20日付で掲載されました。

この研究成果を応用すれば、人為的に蚊の吸血停止を誘導する手法の開発や、蚊が媒介する感染症の新たな対策法として役立つ可能性があります。

蚊はヒトだけでなく、家畜のウシやブタ、ペットのイヌやネコなど様々な動物を刺して吸血します。動物が発する二酸化炭素やにおい、熱によってターゲットを感知し、近づくと、口吻で皮膚をチクッと刺し、さらに血管を探り当て、ほんの少し味見をしてから吸血の続行を決定します。

このとき、刺された動物の血液に常に存在するアデノシン三リン酸(ATP)が、蚊の吸血を促す物質としてシグナルを送り続けることは先行研究で知られていましたが、吸血を終えるタイミングを決めるメカニズムは解明されていませんでした。

吸血するメス蚊は、卵の成長のために血液で効率的にタンパク質などの栄養素を摂りたいのですが、長時間の吸血は動物に気づかれて叩かれたり潰されたりするリスクが高まります。そこで、適当なタイミングで吸血を止める必要があります。お腹いっぱい(腹部膨満)がきっかけとなるという研究報告はありますが、実際の観察ではそうでない例も多く、謎のままでした。

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