広がる「絶望死」...先進国で唯一、低学歴層の死亡率がアメリカで上昇している理由
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月24日 11時0分
穏健なはずのバイデン政権も保護貿易的な政策を進めている。これは、海外資本に反発する労働者に配慮がなされているためである。
現在、中毒性の高い薬物を不正に販売しつづけた製薬会社に対する訴訟が進んでおり、さらに薬物依存の治療法改良も進められている。
しかし、本書が指摘するように、この「絶望死」現象の問題の背景はより根深いものであり、低学歴層の生活状況については今後も議論しつづけることが必要である。日本を含む他の国も、学歴差による雇用や健康状態の格差について十分な注意を向ける必要がある。
高見典和(Norikazu Takami)
大阪大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。2009年博士(経済学)取得。学術振興会特別研究員、早稲田大学政治経済学部助教、一橋大学経済研究所専任講師、東京都立大学経済経営学部准教授を経て現在、東京大学大学院総合文化研究科准教授。専門は経済学史、特に20世紀イギリスとアメリカでの経済学と社会の関係を研究。サントリー文化財団において2009年度鳥井フェローを務め、2012年度「若手研究者のためのチャレンジ研究助成」に採択。
『絶望死のアメリカ:資本主義がめざすべきもの』
アン・ケース、アンガス・ディートン[著]松本裕[訳]
みすず書房[刊]
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