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イランの新大統領就任「羊の皮を被った狼か、救世主か」今後を占う3つの要素

ニューズウィーク日本版 / 2024年7月24日 15時16分

ガザ戦争の影響も無視できない。イスラエルと小競り合いが続くレバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラは、イランにとって中東で最強の非国家パートナーであり、イスラエルとの衝突が全面戦争にエスカレートすれば、欧米諸国にとってイランはますます有害な存在と見なされるようになるだろう。

イランはイエメンでもシーア派の反政府武装勢力フーシ派を支援。そのフーシ派が、サウジアラビア(イランにとっては中東の覇権争いにおける最大のライバル)やアラブ首長国連邦への攻撃を再開すれば、イランの孤立は深まる。

イランの戦略的決定が、選挙など表向きのシステムとは切り離された一握りの有力者により下されていることや、国外の不安定要因が多いことを考えても、イランの意思決定プロセスに、ペゼシュキアンのような自制的な声が増えるのは、総じて良いことだ。

米政治の先行きの不透明性と中東の混乱を考えると、アメリカとイランが近い将来に新たな合意に到達できる余地はあまりない。だが、両国は昨年に非公式の合意に達しており、少なくともその再建に努めるべきだ。

この合意とは、イランが、外国にある凍結資産の一部解除と引き換えに核開発をストップし、イラクとシリアにいる米軍への攻撃を控え、ロシアのウクライナ戦争支援を一部制限するというものだ。

これが実現すれば、バイデンはペゼシュキアンの大統領就任に合わせて、制裁に一定の猶予を与えやすくなる。

ただ、これは応急措置にすぎない。

核合意の再建は、本来の合意がまとめられた15年よりも考えにくくなっている。トランプが核合意から一方的に離脱を宣言して以来、かつてわずかに存在した信頼は失われ、イランは核開発を大幅に進展させてきた。

何らかの交渉をしても、再びトランプ政権が誕生して、約束を破棄するのではないかというイランの(もっともな)懸念、そしてイランを悪者と見なすアメリカの政界全般の空気を考えると、米大統領選前にバイデン政権とペゼシュキアン政権が、核問題などで持続可能な外交的解決策を模索するとは思えない。

ということは、この作業に当たるのは、当面、ヨーロッパ諸国になりそうだ。

本格的な話し合いの最初のチャンスは、9月に国連総会に出席するために、各国首脳がニューヨークに集まるときになるだろう。アメリカもこのとき今後のイランとの関係の基礎を築くことができれば、11月の大統領選後に両国関係を加速できるかもしれない。

このような基礎づくりは、たとえトランプが2期目を担うことになったとしても、1つの選択肢を提供するだろう。

イランとの間で互恵的な取り決めを探るか、それとも危険な対立を招き、アメリカを再び中東で泥沼にはまり込ませるリスクを冒すか、だ。

ペゼシュキアンが体現する約束は、実現するか、失敗するかのどちらかだ。

実際に彼が大統領に就任し国内外の無数の課題に直面したとき、欧米諸国が経済制裁を限定的に解除することにより、イランの国内政策と外交政策を変えるという新大統領の提案にチャンスを与えるのは、悪いアイデアではないはずだ。

From Foreign Policy Magazine

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