バイデン政権とは何だったか──「超大国であろうとして空回り」トランプとハリスそれぞれの打開策
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月25日 12時15分
100カ国以上の参加国にはトルコ、インド、コンゴ民主共和国など、選挙を行っているとはいえ、反政府批判を抑圧したり、マイノリティに対するヘイトを黙認したりする途上国・新興国の政府が少なくなかったからだ。
そのうえ参加国の大半はウクライナ侵攻後もロシア制裁に協力せず、中国との取引も従前通り続けた。
ガザ侵攻が浮き彫りにしたもの
こうした矛盾を都合よくスルーする態度は、ガザ侵攻でさらに鮮明になった。
バイデンはロシアによるウクライナ侵攻を戦争犯罪と批判しながら、ガザ侵攻に関しては国連加盟国の大半が即時停戦を求めるなか基本的にイスラエルを擁護し、軍事援助を続けてきた。
アメリカの歴代大統領には多かれ少なかれこうしたダブルスタンダードが目についたが、バイデンは特にそれが目立つ一人だったといえる。
もっとも、それはバイデン個人の資質というより、アメリカの力が衰えた結果とみた方がいいだろう。
世界銀行の統計によると、世界全体のGDPに占めるアメリカの割合は1989年の冷戦終結段階に約28%で、2022年にはこれが25%程度で微減にとどまったが、同じ時期に中国は2%弱から約17%にまで急伸した。
つまり、アメリカが相変わらずNo.1であるとしても、かつてほど圧倒的な優位は失われている。
そのなかでバイデンは冷戦時代さながらに世界のリーダーとして振る舞おうとしたわけだが、もはやアメリカ自身が白を黒と言いくるめるだけの力を失っている以上、自由や民主主義といった言葉だけが余計に空回りしやすくなったといえる。
トランプ政権が復活したら
超大国の大統領であろうとしたバイデンが図らずも超大国アメリカの限界をあらわにしたとすれば、バイデン後のアメリカはどこに向かうのか。
今後の大統領選挙で軸になるとみられるのは、トランプとカマラ・ハリス副大統領だ。この二人からは全く対照的な未来予想図をうかがえる。
仮にトランプが当選すれば、バイデンのようなダブルスタンダードは影を潜めるだろう。良くも悪くも、トランプはそもそも外国に関心が薄く、大統領時代も自由や民主主義を世界に向かって発信したことはほとんどなかったからだ。
現在でもトランプの関心はアメリカの経済的利益と安全にほぼ集中していて、大戦後のアメリカ歴代大統領が自明としてきた “超大国として世界をリードすること” は、アメリカのコスト負担に見合わないと判断しているようだ。
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