「賢さをつくる」ことはできる...知っておくべき「頭のよさ」のメカニズムとは?【具体と抽象】
ニューズウィーク日本版 / 2024年8月9日 17時50分
「頰を殴られた」という経験は、かなり現実的な《左》の世界のできごとだ。あなたは同じ現実的な抽象度に留まって、すぐに殴り返すこともできる。あるいは、もう少しだけ大きな《右》の世界で考えて、言論で抗議するとか、警察に仲裁を頼むといった他の行動を取ることもできる。さらに大きな《右》の世界まで考えれば、逆の頰を差し出すこともできる。
このうちどれが正解というわけではないが、《左右》の距離を長くとるほど、幅広く深い選択肢をたくさん考え出すことができる。それだけ頭がよいということだ。そして距離が人並み外れて長くなると、良くも悪くも、常人には理解できないアイデアも出てくるのだ。
「具体化」と「抽象化」のスピードが速い:「頭のよさ」の要素②
いわゆる「頭の回転が速い人」とは、反応が速くて言われたことにすぐ返答できる。このような人はつまり何が速いかというと、具体化と抽象化のスピードが速いのだ。《左》と《右》を、各駅停車で往復するのではなく新幹線で行き来する。
「何も考えていない人」も反応だけは速いが、違いは《左右》の移動をしているかどうかだ。「頭の回転が速い人」は、具体的な質問に対して、短い時間の中でも本質や全体を考えてから返答している。
テレビのコメンテーターなどには、この意味で「頭のよい」人が多い。意見を求められて、「では1時間ほど熟考しますね」と言っていたら番組が終わってしまう。聞かれて1秒後には、何かおもしろい意見を言わなくてはならないのだ。
コメンテーターをしている人と実際に会うと、頭の回転の速さに感心する。彼らとはプライベートで会話していても、気の利いた受け答えがすぐに返ってくるのだ。
「具体化」と「抽象化」の回数が多い:「頭のよさ」の要素③
「頭がよい人は、間違いを避けて正解にたどり着くのが上手だ」
もしかして、そう思っていないだろうか? だとしたらあなたは「頭が悪い」。......でも、そんなに気を悪くしないでほしい。世の中のほとんどの人はあなたと同じ誤解をしている。ところが、実際は逆なのだ。
◇ ◇ ◇
「頭がよい人は、たくさんの間違いにぶつかったから正解がわかる」
この本では「思考」ですべてが解決できるようなことを語ってきた。それなのに「体験」も必要だというのは一見主張をひっくり返したようだが、抽象的に考え具体的に考えたところで、思考の結果が常に正しいとは限らない。考えれば正解がわかるというのは幻想である。思考から出てきた理論は、ただの仮説に過ぎない。仮説を具体的な事実に付き合わせてようやく正解か間違いかがわかる。
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