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【パリ五輪・パラリンピック】バヌアツの卓球選手とインドのパラ柔道選手をサポートする日本人コーチの存在?

ニューズウィーク日本版 / 2024年7月26日 12時0分

23歳のパーマー選手は、身長が高く手足も長いため、遠くから足をかける払い腰が得意。20歳のコキーラ選手は、小柄で相手の懐に潜り込むような柔道スタイル。長尾さんは、選手の特徴や得意技を生かしたプレーができるように指導を行っています。

「初めて代表選手の練習を見た時、正直『これで世界大会に出られるの?』と思いました。そのくらい基本的な動作を分かっていなかったんです。技術面に加えて精神面も、基礎から教えていくしかないと思いました」

インドでは、健常者の柔道人口も国の人口比で考えると多くはなく、「空手と柔道がいっしょになっている感じ」で認知度は十分ではないと長尾さんは話します。障害者柔道の歴史も浅く、視聴覚障害者柔道協会も14年ほど前に立ち上げられたもの。レベルの高い指導者もいませんでした。そんな中で、長尾さんは根気よく基礎を繰り返し教えていきました。

(左)パーマー選手への指導風景。視覚障害者柔道では、試合は常に組み合った状態で行われる(右)長尾さんが一般人向けに指導する道場。小学1年生から20歳くらいまでの20〜30人を対象に教えている

ただ、中には基本を繰り返し練習することに対し不満をあらわにする代表選手もいたそう。練習に対する選手たちのモチベーションが低く、無理やりやらせている気分だったと言います。着任した当初は、新しい場所や経験に対する楽しさの方が大きかったものの、しばらく経つと、選手たちの練習態度に対する焦りや不安が勝るように。障害者柔道の指導は長尾さんにとっても初めての経験で手探りの部分もありました。

「選手のための練習なのに、なぜ分かってくれないのか」。泣きながら協会に相談した時、「そんなに焦らないで」「ここはインドだから」という言葉をかけられ、インド人選手の考え方や取り組み方も尊重しなければと、気持ちを切り替えたと言います。

長尾さんの指導により、パーマー選手、コキーラ選手は、技術的にも精神的にも飛躍的に向上していきました。2022年12月に東京で開催された視覚障害者柔道の国際大会「東京国際オープントーナメント」で、パーマー選手が優勝。これは、健常者も含めたインド柔道界において、国際大会初の優勝者という大きな快挙でした。本大会ではコキーラ選手も準優勝の成績を収め、続く2023年10月のアジアパラ競技大会でもパーマー選手は準優勝、コキーラ選手は3位と、男女共に輝かしい成績を残せるように。インドのモディ首相が、SNSで2人の活躍への賛辞と激励の言葉を投稿するなど、インド国内での期待も高まっています。

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