解剖学者「セルライトは消せない」と断言...悪いイメージは「あのファッション誌」が原因?
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月26日 15時1分
こうした広告を見て、多くの女性が抱く疑問は「本当に効果があるの?」だろうが、解剖学者である私は、それ以前の疑問を抱く。健康に全く影響を与えないのに、なぜ治療や処置が必要とされるのか。そもそもセルライトはやっつけるべき敵なのか。
セルライトが除去すべき悪玉になったのは、ファッション誌ヴォーグが英語のメディアとして初めてこの言葉を使ってから。以来、女性たちは皮膚の凸凹を異常に気にするようになった。
セルライトを悪玉に仕立てることで、業界は多様な製品やサービスを売り込める。セレブと契約して「効き目あり」のお墨付きを得れば、効果が疑わしい製品でも飛ぶように売れる。
セルライトに関する論文が初めて学術誌に掲載されたのは1978年だが、そのタイトルはまさに「いわゆるセルライト/捏造された疾患」だった。
リアリティー番組で一躍有名になったコートニー・カーダシアンは、夫と共同で設立したサプリメントブランドから最近、「28日間で目に見えてセルライトが消える」と称するカプセル剤を発売した。
食生活や筋トレで改善
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このカプセル剤の成分はメロンの抗酸化物質、ヒアルロン酸、クロム、ビタミンCなど。これらの成分がうまく体に吸収され、セルライトに作用するかどうかは専門家の見解が分かれるところだ。
消化されたヒアルロン酸が真皮に入り込んでコラーゲンの生産を促すことや、ビタミンCが表皮を厚くすることを示唆した論文はある。だが、こうした成分のセルライト除去効果を検証する標準的な手法は確立されておらず、統計的に有意な効果を示すエビデンス(科学的証拠)はない。
ほかにもカフェイン、レチノール、ハーブの抽出物などを含む塗り薬やローションがセルライト除去に効果ありとして売り出されている。だが化粧品は表皮の下まで浸透しないため、たまった脂肪や結合組織には十分に作用しない。
レーザー治療、針を使うサブシジョン、超音波療法など、一部の侵襲的な治療はそれよりましかもしれない。結合組織の束をほぐし、真皮でのコラーゲンの生産を促して、皮膚の弾力性を改善させると考えられるからだ。ただし治療費が高く、何度か処置を行う必要があり、リスクも伴う。
ヘルシーな食生活を心がけ、水分を十分に取り、適度な運動を続けていれば、肌の状態が良くなり、セルライトもあまり目立たなくなるはずだ。また、減量して脚とお尻、おなかの筋肉を鍛えれば、セルライトは気になるほどではなくなる。ただし、完全に消えるわけではない。
肝心なのは、セルライトが治療が必要な病変ではないこと。見た目が気になっても、残念ながらきれいに消せる方法はない。あると騒ぐのはそれで稼ぎたい人たちだけだ。
では、夏に向けてどうすればいいかって? 賢いあなたは宣伝に惑わされず、お金と時間を無駄にしないことだ。
Rebecca Shepherd, Senior Lecturer in Human Anatomy, School of Anatomy, University of Bristol
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
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