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「環境に優しい」パリ五輪の徹底ぶりと限界...食事や設備で工夫も「グリーンウォッシュ」批判がやまない訳

ニューズウィーク日本版 / 2024年7月29日 16時40分

競技会場の多くは仮設スタジアムで、大会終了後に解体される EKATERINA POKROVSKY/SHUTTERSTOCK

トニー・ヘイネン、プラバカラン・バナラジャ・アンベス(豪クイーンズランド大学)
<CO2の排出量半減を目指す国際オリンピック委員会。大会インフラの95%を既存施設で賄うだけでなく、リサイクル素材の活用、ベジタリアン向けメニューの割合を高める、といった取り組みにも力を入れているが──>

7月26日に開幕したパリ五輪の持続可能性に注目が集まっている。大会組織委員会は史上最も環境に優しく二酸化炭素(CO2)排出量の半減を目指す。

競技会場の新設を大幅に減らし、建築資材は木材を多用。低炭素型コンクリートも活用している。この五輪は持続可能性に焦点を当てたIOC(国際オリンピック委員会)の指針「ニューノーム(新しい規範)」に基づく最初の大会となる。

オリンピック開催は巨大事業だ。これまでの開催都市は巨額の費用をかけてスタジアムや会場を新設してきた。だが大会終了後はほとんど使われず、廃墟と化す例まである。

パリ五輪の組織委員会はさまざまな側面からこの課題に取り組んだ。まず、既にあるものの活用。五輪関連インフラの95%は既存の施設だ。

周囲の景観を生かすため、有名なランドマーク近くに仮設スタジアムを建設。競泳会場は唯一の常設施設だが、建材の大半がCO2を吸収・貯蔵する木材だ。屋根はソーラーパネルで覆われ、高度な水リサイクルシステムを備えている。大会終了後は地域のコミュニティー施設となる。

選手たちは持続可能性に焦点を当てた大会の特徴に気付いたはずだ。選手村にエアコンは設置されず、代わりに自然の風と地下水を利用した冷房システムが採用された。

この決定は物議を醸し、多くのチームは夏の夜に選手たちの安眠を確保すべくポータブルエアコンを持ち込む計画を立てた。これを受けて組織委員会は方針を転換。2500台のポータブルエアコンを導入することにした。

選手と観客は食事の変化にも気付いたはずだ。メニューの60%以上がベジタリアン向けとなり、CO2排出量の削減に貢献する。会場の電力は再生可能エネルギーのみ。過去の大会では停電回避のため、発電機で電力を供給していた。

「循環型経済」重視の一環として、大会で使用される製品の90%はリサイクル素材か、使用後に再利用される。

例えばメダルの素材はリサイクルされた金属で、その中にはエッフェル塔の鉄片も含まれる。選手村のマットレスはフランス軍で再利用され、大会運営のあらゆる面で発生するCO2排出はアプリやチェックリストで計測・評価される。

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