僕らは宇宙を「老化させる」ために生きている...池谷裕二が脳研究から導く「生きる意味」
ニューズウィーク日本版 / 2024年8月1日 19時6分
仕事や人間関係で不条理やつらさを経験して、そのうえでポジティブになるのが一番です。長生きした高齢者の方が「いい人生だった」と語る言葉って、非常に重みがあるじゃないですか。だから、その否定から肯定までの長い旅路を、この本でたどってほしいと思ったのです。
ビジネスパーソンに伝えたいのは、生まれてきたことを誇りに持ち、生きることに自信を持ってほしいというメッセージです。私たちが問うべきは「人生にどんな意味があるか」ではなく、「どんな意味のある人生にしたいか」。意味を訊くのではなく、創り出すプロセスが大事なんだよ、という応援の気持ちが伝われば嬉しいですね。
常識を手放し、全てのものに「保留をつけて考える」
──人工知能が発達するなかで、私たちはどんなマインドセットを持つとよいでしょうか。
これまでの常識や価値観を頑なに守ろうとせず、一度手放す発想が大事になると思います。「人間はこうすべき」といった凝り固まった価値観のもとでは、今の人工知能、特に生成AIの出現は脅威に映るはず。けれども、科学の発見のように新たなものの誕生とともに、物事の価値は本来変わっていくものです。生成AIは人間の新しい価値を発見するためのツールの1つであり、大きな転換点をつくってくれました。
私たちは「自分にしかできないことを探さなくては」と焦るのではなくて、今まで見ていた景色とは違うところに目を向ける余裕を持つのがよいと思うんです。するとそこには、もっと面白い世界や新たな可能性が広がっています。
たとえば「人間がどんどん人造人間のようになって、脳内にソフトウェアをインストールすれば素晴らしい体験ができる。だが、人間の尊厳はあるのだろうか」と思うとします。私自身も「倫理的に足を踏み入れてはいけない」と考えています。ところが、100年後の未来に暮らす人たちは、「もっと改造すればいいのに」と思っているかもしれません。
このように、全てのものに「保留をつけて考える」ことは、本書で大事にしている姿勢でもあります。現在の価値観が最終結論ではなくて、常に新たな発見によって更新されていく可能性がありますから。
──その姿勢は大事にしたいと思います。「人工知能と人間の脳の比較」についての解説で、「生きがいは、ヒトの不完全性から生まれる」とあったことにも、私は安心を覚えました。
もし私たちが完全だったら、生きがいなんてないですよね。失敗を経て何かができるようになる喜びも感じられない。足りない点があるからこそ、人間は魅力的であって、それは生成AIの出現で消えてしまうほど柔なものではないことがわかりました。
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