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考えが深い人になるには? 「具体」と「抽象」で世界の解像度を変える【思考法】

ニューズウィーク日本版 / 2024年8月8日 17時50分

教育の目指すものは小手先のテクニックではない

自分が教える立場になってよくわかったのだが、ビジネスにしろ学校の勉強にしろ、先生が生徒に教えたいのは、場所や時代で変わらない「本質」である。小手先のテクニックではない。ところが、いくら「お客様との信頼関係が大事です」などと抽象的な言葉で語っても、それはなかなかうまく伝わらない。たとえ伝わったとしても、具体的に何をすればいいのかがわからない。

抽象的な《右》の世界ほど、少ない言葉で本質を表すことができる。古今東西、時代や場所が変わっても、その本質は変わらないという素晴らしさがある。「営業ではお客様との信頼関係が大事です」という本質は、日本でもアメリカでもフランスでも、時代がどんなに変わっても正しくあり続けるだろう。

ただし、この抽象的な本質は、そのままでは役に立たないという欠点がある。営業するときに知りたいのは、やっぱり初対面のお客様に何をしゃべればいいかとか、購入を断られたときにどうすればいいかというような、具体的なテクニックのほうだろう。そう、具体的な《左》の世界ほど、実用的であるというメリットがあるのだ。

少し余談になるが、人に何かを伝えるときは、「抽象的な本質」と「具体的な例」を両方伝えると非常にわかってもらいやすい。つまり、両方とも大事なのだ。

《右》ほど精神的であり、《左》ほど現実的である。

少しいじわるな質問をしよう。「1万人の命と1人の命、どちらが大切ですか?」。さて、あなたはどう答えるだろうか? 

即答できた人はあまりいないと思う。もちろん1人の命より1万人の命のほうが重大に決まっているが、そう言い切ってしまうと非常に冷たい人間のように受け取られる。「命の重さは全員同じです! 比べることはできません!」と答えるのも正論であるが、議論から逃げている感じがする。

この質問にどう答えるかが、《左》と《右》のバランスである。1万人の命か1人の命、どちらかしか救うことができないとすれば、1万人の命を救うのが当たり前だ。もしあなたが迷わずこの考えを選んだとしたら、かなり現実的な《左》側で判断をしたことになる。

逆に、あなたがもしも「命の重さは同じです!」と即答したとしたら、かなり精神的倫理的な《右》側で判断したということだ。どちらの判断も正しい。現実的な価値観と精神的な価値観、どちらが正しいというわけではなく、多くの場合はそのバランスで悩み、最終判断をすることになる。

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