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1978年、極左武装グループ「赤い旅団」の誘拐、映画『夜の外側 イタリアを震撼させた55日間』

ニューズウィーク日本版 / 2024年8月7日 17時28分

その予告された声明こそ、第7の声明だが、法王や司教はそれが偽物だとはすぐに見抜けず、男を信じかける。罠に気づいたパウロ6世は、接触者が詐欺師か、あるいは、政府内に旅団に金が渡ることを望まない人間がいると推測する。いずれにしてもそれが分岐点になり、教皇は別の方法を選択するしかなくなる。

4話の赤い旅団で後衛を担うファランダは、凍結した湖で大々的な捜索が行われるニュースを見て混乱する。彼女としばしば行動を共にする中心メンバーは、偽の声明が諜報局の仕業で、殺害を容認するサインであり、イタリア人に覚悟させていると考える。ファランダは処刑に反対するが、結局、旅団は4月20日に48時間の猶予を与える本物の第7の声明を発表し、態度を硬化させていく。

5話のモーロの妻エレオノーラは、夫からの手紙に心を揺さぶられ、政府や法王への説得をつづける。そんな彼女は子供たちと、湖の捜索を伝えるニュースを見る。彼らのもとには、第7の声明について、警察は偽物であることをすぐに内務省に伝えたが、誰もがそれを信じていたという情報が入り、モーロの長男ジョヴァンニは、「厄介払いしたくてたまらないんだ」と語る。

強硬路線と柔軟路線がせめぎ合う図式

強硬路線と柔軟路線がせめぎ合う図式は、偽の第7の声明が多方面に及ぼす影響によって崩れていく。そこには見えない力が働いている。

それを踏まえると、1話と6話に盛り込まれたモーロが生きたまま発見され、病院に収容される場面の意味の違いも明確になる。

モーロが誘拐されてから、ある時点までは、彼が解放される可能性があったが、それが幻想に変わる。1話の可能性と6話の幻想は、同じ場面の繰り返しのように見えて、異なる印象を与える。

1話のそれは、単なる結果ではなく、その後を想像させる生々しい空気が漂っている。病院に駆けつけたアンドレオッティ、ザッカニーニ、コッシーガの間で、まずアメリカの友人に連絡をとか、家族や法王にはまだ知らせずに、といった指示が飛ぶ。それは偽の第七の声明と無関係ではないかもしれない。

『夜よ、こんにちは』と本作は、「夜」をめぐって対をなしていると書いたが、緻密に構成された本作の世界に引き込まれていくうちに、実はそれは内側と外側という境界を越えたところにあったのではないかと思えてくる。

『夜の外側 イタリアを震撼させた55日間』
8月9日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次ロードショー
(c)2022 The Apartment - Kavac Film - Arte France. All Rights Reserved.

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