ハリスが抱える深刻なイメージギャップ「中身は中道、イメージは左派」
ニューズウィーク日本版 / 2024年8月14日 11時40分
本来のハリスは、バイデン路線の忠実な継承者ですし、民主党内では中道に属しますから、この種の罵倒はほとんどデマと言って過言ではないと思います。共和党は大金を投入して、この「ハリスは危険なリベラル」という思い込みのフレーズを浸透させようとしています。ただ、ネガティブ・キャンペーンとしてのコスパは良くないと思います。ネガティブ・キャンペーンというのは、敵の消極的支持層を棄権に追い込むときに一番効果を発揮しますが、その効果は余り期待できないからです。
一方で、このハリスの「実際よりリベラルに見える」というイメージギャップは、民主党の側でかなり問題を起こしており、こちらは深刻だと思います。ハリスは、とにかく雄弁で人権派ですから、左派の若者に人気があります。特に彼女こそ、ジェンダーギャップを解消する闘いを先導してくれると思って、彼女を支持し、憧れる若者が数多く陣営にボランティアとして来るわけです。
ですが、そこでハリスとその側近の掲げている政策が「人権派だが経済は現実派」だと知ると、左派の人々は落胆するし、彼女の周辺はそうした左派と摩擦を起こすしという具合で、イザコザになってしまいます。昨年の予備選でもそうでしたが、自分の陣営の中でトラブルが絶えないのは、ハリスに人望がないとか、マネジメント力がないからではなく、「必要以上にリベラルだと思われている」イメージギャップのためです。
例えば、今回ハリスが統一候補になると、ネット上では「ココナツ」や「ヤシの木」の絵文字を配した「brat ハリス」というミームが一気に拡散しました。ちなみに、ココナツやヤシが出てくるのは、ジャマイカ系でもあるハリスへの敬意から出たものです。ここにおける「brat」というのは挑戦者とか改革者という意味ですが、ここにもハリスを「リベラルの闘士」に見立てるイメージが濃厚にあります。
ただ、少々複雑なのは今回のミームの場合は、絵文字を伴っていることから「尖ったイメージ」は緩和されています。ですから、ハリス氏の周囲もこのミームを歓迎しているようで、昔からのハリス氏の支持派である「Kハイブ」を名乗るグループもネット上では同調しています。
実はこの「Kハイブ」というハリスの古参の支持グループが、サンダースやオカシオコルテスの支持派、つまり党内左派と仲が悪いのです。特にハリスは、経済政策については左派とは一線を画しており、医療保険の全面国営化にも反対ですし、ウォール街の金融機関に対して必要以上に懲罰を行う考え方にも反対です。そんなハリスに対して、一部の党内左派はまだ100%の支持をしていません。
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