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「ロシア支持のくせに我々の援助を受け取るな」スウェーデンのマリとの決裂に他の先進国が続かない3つの理由

ニューズウィーク日本版 / 2024年8月14日 20時40分

マリは先進国の"敵"か?

第二に、今回の"決裂"のきっかけになった、ウクライナによるマリ反体制派支援の疑惑がかなり問題の多いものであることだ。

ウクライナ政府はロシアの軍事力を削る目的で、シリアやアフリカで軍事作戦を展開している。

これに関して、マリ政府はウクライナの支援が同国北部のアルカイダ系組織にも渡っていると主張する。

マリの反体制派はウクライナと「ロシアよりのマリ政府と対立する」という一点だけで共通する。

マリはこうした主張のもとウクライナと断交したのだが、スウェーデン政府は断交そのものを批判しながらも「ウクライナが過激派を支援しているなんてフェイクニュースだ」とは言わない。

これについてアメリカをはじめ他の先進国が沈黙したままであることも、疑惑の濃さを物語る。

その裏返しで、ロシアとつながるマリ政府が先進国にとって"敵"とも限らない。マリ軍事政権は今年4月、アメリカ政府が500万ドルの報奨金を出していた「イスラーム国(IS)」のアブ・フゼイファ司令官を殺害したと発表した。

とすれば、なおさら他の先進国にとって、スウェーデンに続くことはリスクの高い選択といえる。

スウェーデン自身のイスラーム嫌悪

最後に、現在のスウェーデン政府では極右系の発言力が強く、あえて"反イスラーム的"をアピールしやすい(マリ人口の93% はムスリム)ことだ。

スウェーデンでは2022年9月の総選挙により、民主党を中心とする連立政権が発足した。民主党は「スウェーデン人のためのスウェーデン」を標榜する右派政党で、移民制限などを主張している。

その結果、スウェーデンでは2023年、イスラームの聖典コーランを抗議活動のデモンストレーションとして焼却することが合法と認められた。この方針は当然のようにムスリム系市民やイスラーム各国の強い反発を招き、警察が"治安を脅かす"と反対するなかで決定された。

そこでは民主党の支持基盤へのアピール効果が優先されたといえる。

とすると、現在のスウェーデンの与党・政府にとって"反抗的な"マリへの援助を停止し、懲罰を加えることは、たとえ外交・安全保障の面からほとんど意味がなくても、国内政治的にはイスラーム嫌悪に傾いた支持者を満足させるという意味がある。

ただし、国内外の反発を招いてまで"反イスラーム的"を支持者にアピールしようという政府は、さすがに多くない。

それどころか、他の先進国にとっては、スウェーデンにまともにつきあえば、ガザ侵攻をめぐってイスラーム諸国との間で悪化した関係がさらに悪化しかねない。

とすると、スウェーデンが効果も理由も怪しい"マリとの決裂"に向かったことは、他の先進国からスルーされても不思議でないのである。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら

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