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「業績」にならないのになぜ書き続けるのか?...書き手に覚悟が問われる「知的ジャーナリズム」を支える3つの条件

ニューズウィーク日本版 / 2024年8月26日 13時5分

今では人手不足で仕事こそあるものの、働くことに「期待も希望もない」などの冷めきった職業観が若者に広がりつつある。

これから若者の働く状況や意識は、どうなるのか。安定した暮らしにつながる仕事、趣味や推しを可能にする収入、職場の仲間とのつながりなどに加え、自分なりの楽しみや誇りを誰もが見つけられる働き方が広がってほしい。

社会の行方を長期的に左右する若者を取り巻く問題は、これからもIJの主要なテーマの一つだろう。

ところで、多くの関心を呼び、議論を喚起するIJとは、どのようなものなのか。3つくらいの大切な条件があるように思う。

①IJには、編集者の目利きが必要である。

IJのなかには、執筆者が持ち込んだ原稿を編集者(編集委員会を含む)が読み、掲載を決める場合もあるが、実際にはそれほど多くない。

大体は編集者が刊行や特集の趣旨に合致した書き手を探し出し、依頼して執筆にたどり着く。それは、SNSのように書き手が自由に投稿して発表されるものとの一番の違いだ。それだけIJにとっては編集者が重要ということでもある。

同時にそれは編集者の目利きがIJには求められることを意味する。権威のあるIJであれば、伝統を武器に売れっ子の執筆者を抱え込み、恭しく執筆を依頼して読者にそれなりの満足を与えることはできる。

だが、それだけではなんとも退屈でいつかはマンネリになる。むしろ「こんな書き手がいたのか!」という新鮮な驚きを読者に呼び起こすことこそ、編集者の醍醐味ではないか。IJはつねに「スター誕生」の場でもある。

では、編集者はどうやってスター候補を発掘するのか。ケータイ小説が流行ったことがあるが、ネットのSNSの投稿から、地道に書き手を探すこともあるだろう。知り合いの知り合いのツテを頼りに、とにかく会って話をしてみるのはこれからも有効だろう。

そして一度培った信頼が途切れないよう、ゆるく執筆者をつなぎとめるだけの関係構築力も、優秀な編集者には共通している。優れた編集者は情報収集力に長けているので(安くて美味しい店を知っていることが多い)、雑談も楽しくそこから執筆のヒントが生まれたりもする。

その点、『アステイオン』では目利きの編集委員が揃っているので、なにかと有利なのは間違いない。サントリー文化財団が編集事務局を担っているのも大きい。

財団といえば、学芸賞や地域文化賞が有名だが、受賞者以外にも、惜しくも受賞には至らなかったが、優れた書き手が多数いることを財団はよく知っている。それらの執筆候補者に関するデータベースを長年にわたり蓄積しているのは、これ以上にない強みだろう。

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