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CIA女性スパイたちが受けた「露骨な性差別」、アルカイダの脅威を警告もブッシュ政権は...

ニューズウィーク日本版 / 2024年8月22日 16時12分

同じ頃、CIA内部で性差別が横行しているとする女性職員の集団訴訟が起きた。マンディによれば95年に和解した際、CIAは「長年にわたり女性の秘密工作員に対し、組織的な差別を行ってきた」と認めた。

マンディが特に生き生きと描いているのが、国際テロ組織アルカイダを追跡するチーム「アレック・ステーション」における女性たちの活躍だ。当時、ワシントンの政官界にアルカイダを脅威だと思っている人はほとんどいなかった。

軽視され、十分な活動資金も与えられなかったこのチームが、積極的に登用したのが女性だった。責任者だったマイケル・ショイアーはマンディの取材に「女性は細かい所に目が届く。(男性が見落としがちな)情報のかけらをつなぎ合わせることができる」と答えている。

CIA初の女性長官となる指名承認のため上院公聴会で宣誓するハスペル(2018年) AARON P. BERNSTEINーREUTERS

チームの女性たちはアルカイダとその創設者であるウサマ・ビンラディンに関する情報を辛抱強く拾い集めた。報告書の内容は時とともに不吉さを増していったが、ブッシュ政権は問題を先送りにしていたようだ。

2001年8月6日、CIAのアナリスト、バーバラ・スードは「ビンラディン、米本土攻撃を決断」と題する報告書を書いたが、閣僚たちが脅威について話し合うための会合を開いたのは9月4日。同時多発テロが起きたのは、その1週間後だった。

本書からは、攻撃が起きる危険性を以前から警告していた女性たちの嘆きが伝わってくる。

ある女性工作員はマンディに対し、「正しいことをしようと努めてきたのに、多くの人が死んで、それが自分のせいのように思えた。(事件は)私たちに大きな傷を残した」と語っている。怒りはビンラディン捜索への強い動機となり、その捕捉へとつながった。

猜疑心と不健全な競争は今も

本書の登場人物には、既に引退しているか亡くなっている人が少なくない。彼女たちは自らを犠牲にし、スパイという仕事に人生をささげた。この本を読みながら私は、その苦労に感情移入するとともに、自分の苦い経験を思い出していた。

初めての外国での任務の初日、私は現地の支局長に会うように言われた。彼は椅子に踏ん反り返って座り、両足をデスクの上に載せ、火の付いていない葉巻をくわえていた。

支局長は何も言わず、葉巻を指で挟んで小さく回した。私にその場でくるりと回れと指示したのだ。私は当惑しながら、そのとおりにした。彼は笑みを浮かべ、「悪くない」と言った。外見を値踏みされたのだと気付き、私はショックを受けた。

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