イスラエル・ヒズボラの交戦激化、第2局面でイランはどう出る?
ニューズウィーク日本版 / 2024年9月3日 14時20分
軍の疲弊も深刻な問題だ。イスラエル軍はガザのハマスと戦うと同時に、北部一帯をヒズボラから守るための戦いも強いられ、2つの前線を抱えて11カ月になる。この状況を続けるのには無理がある。
イスラエル正規軍の兵士は約16万9000人しかいない。現在の状況に対応し続けるには、最大35万人もの予備役に頼らなくてはならない。
しかし予備役を動員すれば、彼らが仕事を離れるため経済に悪影響が及ぶ。既に8月半ばには格付け会社のフィッチ・レーティングスが、イスラエルの格付けを「Aプラス」から「A」に引き下げた。経済が期待どおりに機能していないことに加え、地政学的リスクが高まっていることを受けての判断だ。国は絶え間ない戦争に疲れ、軍も休息を欲しがっている。
それでも、ネタニヤフは停戦に慎重な姿勢を貫いている。停戦に合意すれば総選挙の前倒しを求める声が高まるかもしれず、選挙を行えば自分が敗れる可能性が高いからだ。
昨年10月7日にハマスの襲撃を受けて以降、ネタニヤフは自分に国の安全を守る能力があることを改めて証明しようとしてきた。そのためにはイスラエルに対するいかなる脅威にも対応できることを示し、北部の住民の信頼を取り戻し、ヒズボラからの攻撃を阻止する必要がある。
ネタニヤフが停戦に慎重な理由は、合意すれば国内に総選挙の前倒しを求める声が高まりかねないことだ NAAMA GRYNBAUMーPOOLーREUTERS
ヒズボラは、ガザでの停戦が実現すればイスラエルに対する攻撃を停止すると言っている。すなわち、イスラエルとハマスの停戦交渉に画期的な進展がない限り、この状況は終わらないのだ。
そして双方に合意に向けた障壁が残っていることを考えると、近いうちに停戦が実現する可能性は低いと言わざるを得ない。
Ian Parmeter, Research Scholar, Centre for Arab and Islamic Studies, Australian National University
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
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