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「自由に生きたかった」アルミ缶を売り、生計を立てる荒川のホームレスたち

ニューズウィーク日本版 / 2024年9月4日 10時35分

彼の妻と娘がなぜ彼のもとを離れたのか、あるいは彼がなぜ妻と娘から離れたのかについて、私は深く聞くことができなかった。彼はただ、「娘たちとは長いこと会ってないから、私がどんな顔をしているか、もう忘れられてしまっているだろう」と、感傷的な言葉をつぶやいた。

桂さんはホームレスになった経緯を淡々と語った。

「私は自由が好きで、他人に縛られたくなかった。アルミ缶を拾って生計を立てているホームレスの先輩と知り合いになって、彼の影響を受けて、この放浪者の道を歩んだ」

桂さんがホームレスになってから約10年が経った。彼は完全にこの放浪生活に慣れ、苦労しながらも自由気ままに生きている。

この写真には、日本でのホームレス生活に必要なすべてのものが写っている。一番手前には引っ越し用の台車、右上には洗濯物干しがある。料理を作る鍋、水をくむためのプラスチックのバケツ、氷を入れるクーラーボックス、椅子や傘などが置いてあり、さらに後ろには寝るテントと物置用の小さなテント、一番後ろにはアルミ缶を詰めた袋と自転車。これが一般的なホームレスの全財産である

ホームレスは空き缶なしに生きていけない

30年以上前に、私は日本初の在日中国人向け中国語新聞「留学生新聞」の創刊に携わった。そのとき、東京の南千住と高田馬場の日雇い労働者を取材したことがある。

当時、ホームレスらしき人が道端に立って、請負業者に建設現場に連れて行かれるのを待っているところを見た。彼らは一日仕事をして、日払いの金を稼ぐのだ。

私は、ホームレスは皆このように生計を立てていると思っていた。しかし、ホームレスが年を取って、労働力を失った後、彼らは何を頼りに生きていくのだろうか。私は今になって、アルミ缶を集め、廃品買取所に持って行ってお金と交換することが、特に年配のホームレスたちにとっては生きるための道であるのだと分かった。

私の観察するところでは、荒川河畔に住むホームレスは、年齢を問わず、ほとんどの人がアルミ缶で生計を立てている。ホームレスが住む場所には、必ずと言っていいほどアルミ缶がある。アルミ缶がなければ、彼らは生きていくのが難しいだろう。

今では、桂さんも斉藤さんも専業の「アルミ缶職人」だ。桂さんは基本的に週2回、朝早く自転車で荒川付近のいくつかの住宅地に行き、アルミ缶を集める。3時間の作業で集めたアルミ缶の量は、少ない時は10キロ、多い時は20キロぐらいに達することがある。

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