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派閥解消後の自民党総裁選、勝者が直面する「有事」の現実とは?

ニューズウィーク日本版 / 2024年9月5日 15時40分

財政について言えば、日銀による金利引き上げの是非、米ドルなどの主要通貨に対する円の適切な水準はどうあるべきか、金利上昇局面では短期的に財政規律を優先させるべきか、それとも大幅な財政赤字を今後も容認して成長を加速し、防衛費をGDPの2%に引き上げるなどの目標達成に突き進むか。

いずれも、決して小さな問題ではない。どれも日本が熾烈な国際経済競争に勝って繁栄を守り、急速に悪化する東アジアの安全保障環境にあって日本の安全を確保していく上で無視できない問題だ。

誰が総裁となるにせよ、党内にはこれらの重要課題について異なる見解を持つライバルが大勢いる。しかし党内の結束を維持できないようでは、党に対する国民の信頼を取り戻すことなど不可能だろう。

新総裁を待つ「毒まんじゅう」

自民党に対する国民の信頼を回復すべく有権者との対話を進めること。党内の亀裂を修復して自民党が効果的な政権運営を行えるようにすること。どちらの課題も、いま総裁選に名乗りを上げている人たちの手に余るかもしれない。

党内主流派の誰か(茂木敏充や上川陽子など)が選ばれれば党内の緊張を緩和できるかもしれないが、自民党の根本的な変化を国民に実感させることは難しい。国民的人気のある誰か(石破か小泉)が勝てば自民党の信頼回復にはつながりそうだが、党内からの反発は強いだろう。そうなると党を制御し切れず、効果的な政権運営は難しくなる。

現時点で最も勝ち目があるのは小泉だろう。国民へのアピール力があるし、菅義偉前首相のような党長老や同僚議員との関係もいい。とはいえ、若さと相対的な経験不足ゆえに苦戦する可能性はある。総裁選で負けた面々はいずれも潜在的なライバルであり、小泉が未熟さを露呈するのを待っているはずだ。

もちろん、そうした足の引っ張り合いは誰が勝ってもあり得る。だから今回の総裁選を経て誕生した首相が強固な信任を得て、安定した政権を築ける保証はどこにもない。

小林鷹之前経済安保相 AKIO KON-BLOOMBERG/GETTY IMAGES

誰を総裁に選ぶにせよ、自民党にとっては大きな賭けになる。なにしろ今の日本は微妙な時期にあり、勝者は(出馬会見で河野が言った)「有事」に放り込まれることになる。

次期自民党総裁は退任する岸田からもらった毒まんじゅうを食わねばならない──と言うのは大げさかもしれないが、国内外に山積する難題が次期首相を待ち受けているのは間違いない。中国は台湾海峡や東シナ海、南シナ海で横暴に振る舞い、核兵器の近代化に余念がない。ロシアは中国や北朝鮮との連携を深めている。アメリカでドナルド・トランプが大統領に返り咲けば、世界はますます予測不能で不安定になる。世界経済の先は読めず、アメリカと中国の経済成長には疑問符が付く。

次期首相は与党内を結束させ、国民の信頼を勝ち取り、外交と経済面における岸田の実績をどう生かすかを見極めながら、こうした難題を乗り切らねばならない。

どれも簡単なことではなく、こんな時期に首相になりたがる議員がたくさんいるのは不思議にも思える。だが首尾よくこれらの障害を乗り越えたなら、彼(または彼女)には最高の栄誉が待っている。日本の繁栄と安全を確立した偉大な指導者として、近代日本の歴史に名を刻まれるという栄誉が。

(筆者は20年、安倍元首相の伝記『The Iconoclast』を上梓した)

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