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自著をヒットさせてきたライターが語る「本を出したい」人が知っておきたいこと【出版業界】

ニューズウィーク日本版 / 2024年9月25日 17時55分

たとえば「本を出せば人生が劇的に変わる」と思っている人は多いです。たしかに、本を出して人生が劇的に変わることもあります。テレビの出演依頼がくるようになったり、講演のオファーが殺到したり。自分のスクールを立ち上げることになったり、自分がプロデュースした商品を販売できたり。

しかし、そういった劇的な変化があるのは「本を出して、その本が劇的に売れたとき」だけです。本を出しても、売れたり話題になったりしなければ、驚くほどの無風状態で、人生はぴくりとも動きません。これは本を出したことがある人から、よく聞く「誤算」です。

出版とは小ロット多品種多産多死

書籍は決してマスメディアではありません。よっぽどの売れっ子著者でない限り、書籍の初版部数(最初に刷る本の冊数)は4000〜6000部程度が近年の主流です。日本全国にある書店の数は約1万店ですから、初版ではその本が入荷されない書店のほうが多いでしょう。

一方、日本では毎日約200冊の新刊が発売されています。毎日増え続ける新商品の中で、何ヵ月も書店に置いてもらうことは難しい。心血を注ぎ何年もかけてつくった書籍が、あっという間に書店から消えることもあります。小ロット多品種多産多死。これが書籍の現実です。

それでもやっぱり本を出すことには価値がある

本を出すことは大変です。時間も労力もかかります。必ずしも多くの人に読まれるとは限りません。それでもやはり、本を出そうと考え、企画し出版することは、他の何かとは似ていない唯一無二の体験だと、私は思います。

なぜなら、本をつくるプロセスは「これほど、自分自身を深く知れる機会はほかにない」と感じるほど、発見の連続だからです。

自分の人生をもとにして本を出すということは、「自分が持つコンテンツが、どう読者の価値になるか」を模索する行為です。これはそのまま「自分がどのように生き、どのように役立ってきたか」を深く見つめ直す作業とも言えます。

自分自身や自分の思想を社会に向かって開いていく行為。それが、本を出す、ということです。そして同時に、自分自身も知らなかった自分を発見することにもなります。

「自分にすでにあるもの」からはじまる思考の冒険

これもあとで詳しく書きますが、本を出すときには、「過去の自分の考えをまとめる」だけでは全然足りません。本を出そうと思ったときには考えもつかなかった思考を本づくりの過程で獲得するのが、本を出すという行為なのです。

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