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結婚して分かった「選択的夫婦別姓」の必要性と男尊女卑が続く日本社会

ニューズウィーク日本版 / 2024年9月13日 17時51分

日本では1870年に平民苗字許可令が出て一般庶民の苗字使用が許可されようになると、1875年には苗字必称義務令が布告され、すべての人が苗字を使うになった。結婚後の苗字については1876年、妻は「実家の苗字」を名乗るよう決められた。明治維新までは公家や武家などの女性が結婚した場合、生まれた家(つまり実家)の苗字を使い続けるのが普通だったからだ。

その後、1898年に制定された民法で「家制度」が確立し、「妻ハ婚姻ニ因リテ夫ノ家ニ入ル」と定められ、結婚後は夫の苗字を名乗ることが法的に定められた。1945年の終戦から2年後に民法は改定され、家制度は廃止となり、現在に至る。

こうして見ると、結婚後に女性が苗字を変えるという法制度は、戦前のわずか50年程度しか続いていなかったことが分かる。

夫婦別姓反対派の人々の「本音」

夫婦別姓に反対している人々は、「家族の絆が弱まる」「夫婦の一体感が失われる」「子どもがかわいそう」といった理由を述べているが、すでに多くの人が指摘している通り、どれも根拠なき思い込みと言える。特に「子どもがかわいそう」に至っては、偏見や独断を含んでいると言っていい。

にもかかわらず、夫婦別姓に頑なに反対するのは、彼らがそもそも、「両性の本質的平等」という価値観を受け入れていないからではないだろうか。要は、男女平等がイヤなのだ。

そんなバカなと思うかもしれないが、SNSをのぞいて見れば、日本にはまだまだ「誰か差別をしたい人たち」が山ほどいることがよく分かる。自分に誇れるものが何一つない時、人は容易に差別に走る。そういう人たちから見れば、差別是正策である夫婦別姓には、反感を覚えるのだろう。無論、反対派の人々全員が差別主義者とは思わないが、そういう層を多分に含んでいるのは間違いないだろう。

反対派の人々が「家族の絆が失われる」と語るとき、彼らの頭のなかにある「家族」とは、戦前の約50年間だけ続いた「家制度」に基づく家族像である。だが、それは1945年の敗戦によってすでに瓦解している。残っているのは、GHQが手をつけそびれた家制度の残滓ともいうべき強制的夫婦同姓である。

夫婦別姓反対派の人々の本音は、きっと次のようなものではないだろうか。

「女性が働いて社会に出る必要などありません。男性は外で働き、女性は家を守って夫を助ける。これが日本の正しい家族の姿です。女性は結婚したら、相手の家に入るもの。だからこそ、妻は夫の苗字を名乗るのです。男性には男性の役割、女性には女性の役割がある。これは差別ではなく区別です。欧米から押し付けられている『男女平等』、『ジェンダー平等』といった価値観は、日本社会には合いません。私たちは、できることなら戦前の家制度を復活させたい。家制度に真っ向から反する夫婦別姓には、反対です」

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