人間の皮膚細胞からできた卵子と精子が「親子の家族観」を変える3つの衝撃的可能性
ニューズウィーク日本版 / 2024年9月19日 18時2分
2つ目は、医学的な不妊の一部を回避できることだ。例えば、生まれつき卵巣が機能していない女性や早期閉経後の女性が卵子を作るために利用できるだろう。
3つ目は、同性カップルが2人のどちらとも血縁関係がある子供を持てることだ。
IVGの技術が実用化されれば、私たちが家族をつくるダイナミクスが前例のない方法で変わることになる。従って法的、規制的、倫理的に慎重な検討が必要だ。
まず、安全性の問題がある。体外受精など他の生殖技術の実用化と同じように、慎重な治験や厳密なモニタリング、生まれた子供の追跡調査が不可欠になる。
アクセスの公平性も重要だ。富裕層しか利用できない技術なら、不公平に思えるかもしれない。公的資金による支援が適切かどうかは、国家が生殖を支援するべきかどうかという問題でもある。
アクセスの制限についても考えなければならない。
例えば、女性は年齢とともに卵子の数や質が低下し、妊娠の可能性が低くなるが、IVGによる体外受精は理論上、年齢に関係なく「新鮮な」卵子を提供できる。
しかし、より年齢の高い女性が親になることを医学的に手助けするということは、人生の後半に赤ちゃんを持つことに関連する身体的、心理的、その他の要因を踏まえて議論の余地がある。
また、男性同士のパートナー2人から皮膚細胞を採取して胚を作製したとしても、妊娠を担う代理出産が必要になる。国際的な代理出産は法的や倫理的な問題を伴う。国内での代理出産の環境が整わない限り、男性カップルへの恩恵は限定的になるだろう。
最後に、子供の法律上の親は誰かという問題がある。既に、代理出産や卵子提供、精子提供によって形成される非伝統的な家族をめぐって法的議論がなされている。
IVGは理論上、3人以上の遺伝的な親を持つ子供や、親が1人だけの子供をつくることもできる。つまり、親になるということに関する理解の更新を私たちに迫るのだ。
KATE_SEPT2004/ISTOCK
優生学や道徳的な議論も
IVGがもたらす新たな可能性のうち、最も議論を呼んでいるのは同性間の生殖だ。同性カップルであるために生殖ができないことは「社会的」不妊であって、医療で支援する義務はないという考え方もある。
しかしIVGに関する道徳上の問題は、同性カップルでも異性カップルでも事実上、同じだ。いずれの場合も、2人の親の両方と血のつながった子供を持ちたいという、同じ目的をかなえるものだ。従って、どちらか一方のカップルだけアクセスを否定するのは不当と言える。
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