自動車とジェネリック医薬品、両業界に共通する「成功を手助けする黒子」の存在
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月11日 15時10分
アメリカにこんな店はない。アメリカでは、味のしないスーパーマーケットのコーヒーや、コーヒーショップとは名ばかりの多少こぎれいな食堂と大差ない店が当たり前だった。
シアトルでなら、コーヒーハウス文化が花開きはしないだろうか?
しかし、スターバックスの経営陣はこのアイデアに興味を示さなかった。彼らはホスピタリティ事業には手を出さないと言って譲らなかったが、シュルツは粘って最終的に同社CEOに試験的に1店舗だけ出すことを認めさせた。そして、これが驚くほどの成功を収めた。
だが、それほどの人気を獲得しても、同社の創業者たちは店舗数を増やすシュルツの計画に断固反対した。
シュルツは仕方なくスターバックスを辞め、自分でエスプレッソ・バーを開いた。
シュルツが開いた店のビジネスモデルは、彼のイタリアでの体験をシアトルにそのまま再現した(移し替えた)ようなものだった。
シュルツの店の名は「イル・ジョルナーレ」。ミラノで発行されているイタリアの新聞名から取ったものだった。バリスタは白いシャツを着てボウタイを結び、店内のスピーカーからはオペラ音楽が流れており、メニューにはイタリア語でも書かれていた。
数年後、シュルツの元雇用主がいよいよコーヒー豆販売の事業を売却することになったとき、シュルツには買い取るだけの十分な資金ができていた。
そして、オリジナルの「スターバックス」の名の下、シュルツは2つの事業を合併した。
外から見ていると、起業家は天才のように見えるかもしれない。彼らはアイデアの泉で、必要に応じてビジネスアイデアを生み出す尋常ではない能力を有しているように思える。
とはいえ公式に従って考えるようになれば、起業の機会はどこにでも転がっていることが自分でもわかってくるだろう。
ヒット商品を分解してコピーする
今日、私たちが使う医薬品の90パーセント以上がジェネリック医薬品(後発医薬品)だ。すなわち大企業が特許を保有する製造方法に倣って製造された調合薬である。
ジェネリック医薬品には、計り知れない利点がある。これらがなければ、世界中の多くの人にとって、命が助かる医薬品が手の届かないものとなってしまう。
医薬品は、特許が切れればその製法が公開され、他の製薬会社がジェネリック医薬品としてその医薬品を製造できると、たいていの人は考えている。だが、それは稀なケースだ。
多くの場合、製薬会社は自社の製法の公開を避けるため、さまざまな法律や規制を持ち出して抵抗する。オリジナルの製法が公開されて、ジェネリック医薬品が製造されるのは、ごく稀なことである。
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