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自動車とジェネリック医薬品、両業界に共通する「成功を手助けする黒子」の存在

ニューズウィーク日本版 / 2024年10月11日 15時10分

それよりもむしろ、ジェネリック医薬品は「デフォーミュレーション」と呼ばれる一連の複雑な実験・分析によって開発されることのほうが多い。デフォーミュレーションと呼ばれるのは、1つの錠剤や丸薬を、最終のフォーミュラから個々の配合成分にまで分解する、通常とは逆手順の作業を行うためだ。

デフォーミュレーションには、長年の教育も莫大な費用のかかるラボも必要ない。世界中には分解・分析で長年の経験を誇る専門ラボが多数あるので、インターネット環境とクレジットカードがあれば誰にでも行える。しかも、分析対象は医薬品に限らない。

こうしたラボに依頼すれば、高級化粧品やシャンプー、フレグランスから塗料や接着剤、洗濯用洗剤に至るまで、驚くほど広範な製品の配合を解明してくれる。

費用は、ほんの2000ドルほどだ。

何十年か前であれば、ヒット商品を分解してその構造を明らかにし、正確な設計図を作成するには、膨大な時間と費用が必要だっただろう。だが、もうそんな必要はない。

企業としては、自分たちの発明がいともたやすくコピーされてしまうのは悔しいだろうが、この事実を受け入れて、もっと賢く対処してきた企業もある。

他メーカーを徹底的に分解したトヨタ

たとえば、自動車業界では、何十年も前からリバース・エンジニアリング(隠れた仕組みを見出して逆設計を行うこと)が重要な役割を果たしてきた。1933年、豊田喜一郎は新型シボレーを分解した結果から、織機製造から手を広げて自動車開発部門を設立すべきだと一族を説得した。

3年後、喜一郎一族の会社「豊田自動織機製作所」は第一号の車を発売し、自動車開発部門をトヨタと改名して独立させた。一族の姓「豊田」を8画(日本におけるラッキーナンバー)で書けるように、カタカナで表記した名前だ。

それから1世紀近くたつ頃には、豊田喜一郎のかつての型破りなアプローチが、自動車メーカーの標準的な開発手順の一部になっていた。今日、自動車メーカーは日常的にライバル社の車すべてを分解している。ただ、彼らはこのプロセスをリバース・エンジニアリングとは呼ばず、「競合ベンチマーキング」と呼んでいる。

エンジニアたちが競合他社の車に飛びつき、手際よく部品を1つずつバラバラにしていく。そして技術的な進歩、想定されるコスト削減幅、他の自動車メーカーの戦略的方向性に関してわかったことを記録していく。

自動車業界について特に注目したいのは、主要メーカーがすべて競合他社の製品をリバース・エンジニアリングしているということでもなければ、そのことを公言してはばからないということでもない。

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